スズキの燃費測定に関する不正問題が発覚した。設計開発プロセスの革新を実現するモジュラーデザイン(MD)の第一人者である、モノづくり経営研究所イマジン所長の日野三十四氏は、かつて自動車メーカーでエンジンの排出ガス低減研究や車両型式認証受験を行った経験を持つ(一人の技術者がモジュラーデザインを確立した軌跡)。日野氏が、三菱自動車の燃費不正問題に次いでスズキで起きた燃費測定の不正に対し、同社による説明の疑問点と、国土交通省への提言を語る。
2016年5月18日、スズキが燃費測定に関して不正があったと発表しました。今回のスズキの不正の中身はこうです。 車両の走行抵抗値を法律で定められた「路上での惰行法」で測定すると、ばらつきが多く信頼できるデータを得るまでの日数が多くかかる。そのため、代わりに車両の走行抵抗を構成する車体の空気抵抗とタイヤ、ブレーキ、数十のベアリング、トランスミッションなどのユニット単体の抵抗値を実験室で測定し、それらの総和を求めて走行抵抗値として提出していた──。 しかし、不可解な点があります。惰行法で走行抵抗値を測定すれば、測定値のばらつきを平均化するための測定回数を含めても、最大で10回程度の測定で済みます。これに対し、個別のユニットの抵抗値を測定しようとすれば、百近いユニット数(注:ベアリングだけでも自動車で使われる数は数十個に及ぶ)の抵抗値をばらつきも含めて実測することになります。すると、その測定回数は膨大になり、測定に多大な時間がかかると考えられるのです。 しかも、個別のユニットの抵抗値を積み上げれば惰行法の抵抗値になるというものでもありません。例えばタイヤ単体の転がり抵抗(以下、コロ抵)は、一定速においてタイヤを駆動するモーター力と、タイヤを乗せたローラーのダイナモメーターの吸収力を読み取り、両者の力の差で求めます。しかし、平面の路上と円筒形のローラーではコロ抵が大きく変わります。 加えて、一定速法の結果値を惰行法の値に置き換える計算方法はないと思います。 さらに言えば、自動車へのタイヤの装着は路面に対して3次元的な取り付け角(トーイン角、キャンバー角、キャスター角)を持たせており、それらがコロ抵に大きく作用します。しかし、タイヤ単体でのコロ抵測定の時に、それらのばらつきも含めて再現するのは難しい。ベアリングは3次元的なジオメトリ角度を持って装着され、かつ装着部位によって温度が異なっていて、それらがベアリングの抵抗を左右します。それなのに、数十個のベアリングの単体の抵抗値を測定するときに、実車装着状態の3次元的ジオメトリ角度や温度のばらつきも含めて再現して実測するのでしょうか。不可解な技術的説明、スズキに立ち入り検査を実施すべし
スズキの燃費測定不正、改めて国交省の責任を問う
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