アジアの新興国のキャッチアップが激しさを増す中で,依然として日本企業が高い競争力を発揮している分野の一つが光学分野である。テーマサイト「ナノテク・新素材」の2007年ランキングに光学技術関連のニュースが多いのは,「光学分野における優位性を維持したい」という意欲の表れであろう。日本企業が光学分野で強いのはなぜか。それは,材料と加工法の微妙な擦り合わせが必要であり,できあがった部品や製品を見ただけでは,なかなか真似ができないからだと思われる。
▼ 2007年「ナノテク・新素材」記事ランキング
例えば,ランキングトップに輝いた松下電器産業らの微細周期構造を光学ガラスに設ける技術にしても,反射を防止したい光の波長よりも短い周期構造をガラス表面に設けるには微細加工技術はもとより,ガラスや型の材料など加工技術と材料技術を高度に融合した手法が必要だったと思われる。
また光学分野で注目されたのが,フラットパネル・ディスプレイ(FPD)や白色LED向けの透明電極向けに多用されているITO(インジウム・スズ酸化物)の代替材料の開発である。原料のInの価格が高騰していることが引き金であった。これまで,ZnO(酸化亜鉛:Zinc Oxide)の開発が先行していると思われていたが,様々な新素材が提案されるところが日本の研究陣の底力である。
例えば,ランキング6位になった,東海大学が開発した水酸化マグネシウム。水酸化マグネシウムの結晶中に炭素が入りこんでいる,というユニークな構造である。水酸化マグネシウムが透明性を,炭素ネットワークが導電性を提供している,という異種材料の複合化の考え方は,他の材料開発でも参考になりそうである。
このほか,ランキングで目立ったのは,燃料電池などのエネルギー関連や植物系プラスチックなどのニュース。地球温暖化問題や廃棄物問題など環境問題の解決策を材料に求める志向が見て取れる。