携帯電話用充電器の試作機
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固体状メタノール
固体状メタノール
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DMFCの燃料極側に,固体状メタノールを投入
DMFCの燃料極側に,固体状メタノールを投入
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1分程度,反応が開始されるのを待つ
1分程度,反応が開始されるのを待つ
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しばらくするとプロペラが回りだす
しばらくするとプロペラが回りだす
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携帯型音楽プレーヤを駆動
携帯型音楽プレーヤを駆動
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 栗田工業は,固体状のメタノールを燃料に使うダイレクト・メタノール型燃料電池(DMFC)のシステムを,「第3回 国際水素・燃料電池展」に出展した。

 同社は以前にも固体状メタノールを使ったシステムを出展していたが(Tech-On!の関連記事),今回はシステムをさらに進化させた。従来は固体状メタノールを実際に燃料として利用する際に,少量の水を接触させて燃料極に供給していた。今回のシステムでは,この水が不要になった。「水は使いません。固体状のまま燃料極付近に装てんするだけで,発電を開始します」(栗田工業のブースの説明員)。従来は水を供給する補器が必要だったが,それらが不要になることから,よりシステムを小型化できるという。

 栗田工業はこの固体化技術を応用し,固体カートリッジ型(カード型)の燃料を実現し,携帯機器向けDMFCシステムへの適用を目指す。同社は既に機器メーカーなどと応用を見据えた検討を開始しており,「早ければ2007年度内,遅くとも2008年度中には実用化したい」(栗田工業 開発本部 新エネルギーグループの担当者)という。

包接化合物を利用

 栗田工業は試作したDMFCシステムを使い,音楽プレーヤや携帯電話機を駆動したほか,小型モータを使ったプロペラを回転させた。例えばプロペラを回転させる実演では,固体状メタノールの粉末をDMFCの燃料極部に装填し,その後30秒ほどでプロペラが回り始める様子を示した。固体状メタノール粉末の直径は,数mmである。固体状メタノールが気化して燃料極部に到達することで反応を開始しているようだが,同社は水を使わずに発電を開始できる詳細については明らかにしていない。

 栗田工業はメタノールを固体化するために,包接化合物と呼ばれる結晶体を用いている。空孔を持つホスト分子の中に,ゲスト分子としてメタノールを格納している。ホスト分子は「ある種の有機系材料」を用いているとするが,詳細は明らかにしていない。メタノールを固体状物質として扱えることから,危険物/劇物指定の範囲から外れるという。また航空機への持込に関しても,制限は課せられないという。なお同社は今回,包接化合物を使って水素を固体化する技術に関しても出展していた。