屈折率(nd)が2.14352と非常に高いプレス成形用光学ガラス「K-PSFn214」で作製した1次プリフォーム(少し黄色がかったガラス玉。プレス成形の金型に入れる材料)
屈折率(nd)が2.14352と非常に高いプレス成形用光学ガラス「K-PSFn214」で作製した1次プリフォーム(少し黄色がかったガラス玉。プレス成形の金型に入れる材料)
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屈折率を高めた光学材料の例。屈折率のほか,アッベ数も表示した。日経エレクトロニクス2004年9月13日号の図を基に,今回の材料の数値をプロットした。
屈折率を高めた光学材料の例。屈折率のほか,アッベ数も表示した。日経エレクトロニクス2004年9月13日号の図を基に,今回の材料の数値をプロットした。
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「K-PSFn214」の特性表。クリックすれば拡大できます。
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 住田光学ガラスは,屈折率(nd)が2.14352と非常に高く,しかもプレス成形が可能な光学ガラス「K-PSFn214」を開発した。既に量産用のるつぼで安定して製造できることを確認済みで,サンプル出荷できる状態という。

 主にデジタル・カメラやカメラ付き携帯電話機などのレンズに向ける。一般にレンズ材料の屈折率が高いほど光学機器を薄型にできる。例えばデジタル・カメラのレンズに利用すればカメラ本体の薄型化や,画角の広角化が可能である。

 プレス成形できる高屈折率のガラスとして実用化しているのは,例えば屈折率が約2.0である同社の「K-PSFn2」がある(Tech-On!関連記事)。他社品では,オハラなども屈折率約2.10のプレス成形用ガラスを既に開発発表しているが,実用化はまだのもよう(Tech-On!関連記事)。今回のレンズの屈折率は他社品を上回る値で,民生機器向けとしては最も高い屈折率を持つ。なお,高屈折率を持つレンズ材料としては,屈折率2.095の光学セラミックスなどもある(Tech-On!関連記事)。しかしこうしたセラミックスは焼結や研磨といった工程が必要で,コスト高につながりやすい。

透過率も高める


 「屈折率が高い上,我々の予想を超える透過率も確保できた」(住田光学ガラス 取締役 研究開発本部長の永浜忍氏)ことも特長とする。高屈折率の光学ガラスは,一般に着色度も高い。言い換えれば可視光の透過率が低くなりやすい。しかし,今回のK-PSFn214の透過率はK-PSFn2に比べても上がっているという。

 ガラス転移点は425℃で,ガラス屈伏点は449℃である。プレス成形に必要な温度は約470℃と比較的低い。このため,金型の劣化を抑えられると説明する。ただし色収差の出やすさを表すアッベ数は17.8と小さい。アッベ数は小さいほど色収差が生じやすいので,レンズ設計をする上では注意が必要になる。線膨張係数は98×10-7。比重は7.06である。

 価格は「量産が進んだ段階では,屈折率2.0の品種に対して大幅に上がることはないだろう」(住田光学ガラス)。今回の光学ガラスは鉛(Pb)を含有していない。

 なお,今回の光学ガラスについて,2007年1月24日~26日まで東京ビッグサイトで開催される「第7回 ファイバーオプティクス EXPO」で展示予定である。