DRAMの最大需要先はパソコンの主記憶だ。需要容量全体に占めるパソコン向けDRAMの2004年の比率は実に73.9%に達する。このほか,コンピュータ向けを合計すると8割を超える(図1)。新しいDRAMの需要先であるデジタル家電向け構成比が上昇するといっても,その需要容量に占める構成比は小さく,2004年の7.1%に対してピークとなる2006年ですら8.2%程度だ。その後はマイクロ・コントローラとメモリ,周辺回路を1チップ化したシステムLSIが中心となり,DRAM単体での需要は減少する。

 また,2004年から携帯電話機向けにDRAMが搭載されるようになったが,総需要容量に占める割合は2012年でも最大で4%程度までしか増えない。DRAM市場は中長期的に見て,容量ベースでパソコン向けが7割を超える状況が続く。

図1●DRAMの用途別容量需要構成比(2004年は実績値,2005年以降は予測値)

世代交代が一気に進み,主力は512Mビット品に


 日経マーケット・アクセスの調査によると,2005年のDRAM世界生産額は対前年比14.4%増の276億米ドルにとどまる(図2)。価格が年間を通して緩やかに下落するからだ。2005年第1四半期は,前四半期に比べて価格下落幅が拡大した。第1四半期は例年DRAMの季節需要変動の底に当たる。これに加えて2005年第1四半期に入ってDRAMの生産歩留まりが向上した結果,供給量が増えたことが価格下落を一段と加速した。

 DRAM生産量を容量別に見ると,2005年には512Mビット品が対前年比5.7倍の25億1200万個まで急速に増える。対照的に256Mビット品の生産量は,対前年比21.2%減の26億5100万個に低下する。主役は完全に512Mビット品へと交代する。512Mビット品生産額は2005年,256Mビット品の2倍近くなる。

 256Mビット品から512Mビット品への主役交代が急速に進むのは,DRAMメーカーの事情による。512Mビット品の歩留まり向上により製造コストが下がった結果,256Mビット品よりも512Mビット品を生産する方が利益率が高くなったのだ。

図2●年間DRAM生産額と成長率の推移(2004年までは実績値,2005年は予測値)

DDR2型の価格は2005年もDDR型に比べて割高感


 パソコンの主記憶では,データ転送速度を高めた新しいタイプのDRAMであるDDR2型DRAMの搭載が,2004年第3四半期に始まった。2004年第4四半期にDRAM全体に占めるDDR2型の割合は,ビット換算で18.1%だった。価格が従来のDDR型に比べて20%程度高いことから,性能は上がるものの普及のペースは遅い。日経マーケット・アクセスの予測では,2005年後半でもDRAM生産に占める比率はビット換算で54.8%にしかならない見込みだ。

 次回は,フラッシュ・メモリーの市場動向を解説する。


■菊池 珠夫■
野村総合研究所を経て,1996年に日経BP社「日経マーケット・アクセス」編集記者。2002年に日経BPコンサルティングが設立した後は,引き続き「日経マーケット・アクセス」で半導体やその応用機器市場の分析記事を執筆。

■キクタマのメモリ市場分析■
第1回シェア拡大から利益重視に向かうDRAMメーカー
第2回価格下落で2005年のDRAM世界生産額は14.4%増に減速
第3回フラッシュの成長はNAND型が支え,NOR型は厳しい状況
第4回NAND型フラッシュ,メモリ・プレーヤと携帯電話機用需要に火が点いた
第5回300mmウエハー対応ライン,2005年はSamsungが投入量でIntelを抜く
第6回安定成長へソフトランディングなるか,デジタル家電
第7回2005年のパソコン生産台数は6.7%増,金額はマイナス成長
第8回携帯電話機の生産動向,GSMは新興国向けでまだまだイケる
第9回2005年の液晶テレビは供給過剰に,生産調整はいつ?
第10回SCEIは部品不足か,PSP販売計画を下方修正

■「特別報告書」発行のご案内■
 日経マーケット・アクセスでは,携帯電話機やパソコンなど半導体メモリの応用製品と半導体メモリの生産動向について詳細にまとめた特別報告書「半導体メモリー/応用機器市場分析2005年4月」(年4回発行)の最新版を2005年4月27日に発行しました。詳しい内容はこちらでご覧になれます。