あちらこちらで人工知能(AI)に関する話題が増えてきました。もちろん、デジタルヘルスの周辺も例外ではありません。むしろ、「人工知能は医師を凌駕するのか」というテーマは、その話題の主役の一つになっている感もあります。

 日経デジタルヘルスの2016年9月アクセスランキング1位に「AIが人間を超える、その時医療は…」がランクインしたのも、そんな関心の高まりの表れでしょう。記事では、医師資格を持つ気鋭の起業家であるPEZY Computing 代表取締役社長の齊藤元章氏が、人工知能の進化が医療にもたらす未来として、9つの段階を予測しています。

 詳細は記事に譲りますが、その予測が訴えているのは、単に「人工知能は医師を凌駕するのか」という次元の話ではなく、人工知能が医療という存在そのものを再構築してしまう可能性。そうなると、新たに定義された医療の中での個々の医師の役割は、おのずと変わってくるはずです。

 今回のランキングで4位の「慈恵医大、AIを取り入れた救急搬送を実証へ」や8位の「IBM Watsonの医療応用はここまで来た」、10位の「波乱万丈の健康、“超ビッグデータ”で予見する」などの記事にあるように、技術革新とその医療応用は着実に、いや長足の勢いで進んでいます。もちろん、技術革新と社会実装は別物で、制度・法律や責任論などといった課題を前に一筋縄で議論が進まないことは明らかです。ただし、そこで思考停止に陥ってしまっては、むしろ医療を担う医療者自身が結果的に“不幸な未来”に見舞われてしまいかねません(関連記事:「2025年、不都合な未来」への処方箋は2つ)

 今必要なことは、人工知能の進化と対峙するのではなく、それを正面から受け入れること。その上で、医療全体をどう最適化していけるのかという議論を、さまざまな立場の関係者が連携してすみやかに進めていくことではないでしょうか。