「クルマの中を“風邪をひかない空間”にする。毎日、健康診断ができる。ハードルは高いが、究極的にそうした方向を目指し、研究開発を進めていることは間違いない」(デンソー 取締役 専務役員の伊藤正彦氏)。

 デンソーが、ヘルスケア分野の取り組みを加速させている。念頭にあるのは、自動運転の時代。「自動運転では運転者のモニタリングの重要性が増す」(伊藤氏)と見て、生体計測技術などに磨きをかける。しばしば大きなニュースとなる、運転者の急病による事故を防ぐことにもつなげる。ヘルスケア・医療の現場に向けた技術開発を進めつつ、それをゆくゆくは「本業(自動車)に持ってくる」(同氏)狙いだ。

デンソーの伊藤氏
デンソーの伊藤氏
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 同社は今後、新しい売上高・利益の源泉として、8つの新分野に力を入れる(関連記事1)。ヘルスケアはそのうちの1つ。この分野を開拓するための「ヘルスケア事業室」も立ち上げた。

 トマト栽培などの「農業支援」から、食品の鮮度を維持する物流システム「コールドチェーン」、脱・化石燃料に向けた「バイオ(微細藻類)」、橋梁点検などに使う「産業用ドローン」…。車載部品メーカーという枠を超え、多岐にわたる分野の開拓を進める同社。「ヘルスケア企業」として名をはせる日は、果たして来るか――。