ITベンチャーのポート(東京都)と東京女子医科大学は共同で、IoT(Internet Of Things)を用いた「都市型遠隔診療」の安全性や有効性に関する実証研究を始めた。ポートは2015年11月から、医師の診療から薬の処方、決済、薬の配送までをカバーする遠隔診療サービス「ポートメディカル」を提供しており、現在はベータ版のリリース準備中(関連記事1)。2016年6月には、宮崎県日南市と無医地区で遠隔診療の実証を開始した(同2)。今回は都市部の患者を対象に、高血圧治療に限定して検証を行う。

調印式の様子。左から東京女子医大 高血圧・内分泌内科 準講師の谷田部淳一氏、同科 教授・講座主任の市原淳弘氏、ポートの春日CEO、同社執行役員で医師の伊藤恭太郎氏。東京女子医大側も今回の事業後には、地方モデルや他の疾患の遠隔診療も実証を検討したいとした(写真:日経デジタルヘルス)
調印式の様子。左から東京女子医大 高血圧・内分泌内科 準講師の谷田部淳一氏、同科 教授・講座主任の市原淳弘氏、ポートの春日CEO、同社執行役員で医師の伊藤恭太郎氏。東京女子医大側も今回の事業後には、地方モデルや他の疾患の遠隔診療も実証を検討したいとした(写真:日経デジタルヘルス)
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 日本には高血圧者が約4300万人いると推計されているが、実際に医療機関で受診するのはその約半数にとどまるという。通院や病院での待ち時間がストレスになり、未受診や離脱につながっているとみられる。特に、働き盛りの30代~50代の男女に、そうした「放置高血圧者」が多いことから、ポートは都市部でも遠隔診療サービスを展開する考え。今回は都市型遠隔診療の効果や安全性を検証していく。

 具体的には、本態性高血圧症(特定の原因によらない高血圧症)の患者で、ネットワーク血圧計を使って自分で血圧の計測ができる成人男女から被検者を募り、除外項目をクリアした被検者を対面診療と遠隔診療の2群に分けて実証する。目標症例数は450例(各群225例)。1年ごとに再割付して経過を観察する。登録期間は2016年9月1日~2017年3月31日、実施期間は2019年3月31日まで。

 実証事業の実施費用はポートが負担する。同社は今回の事業や日南市の事業を含め、遠隔診療の実証に数億円規模の投資をしている。同社代表取締役CEOの春日博文氏は「年内に都市部で遠隔診療サービスの本格導入を目指す」とした。