2016年4月の電力小売り全面自由化まで、残すところ後3カ月。来年1月にも電力会社を切り替えるスイッチングの予約受け付けが始まるとあって、エネルギー業界はまさに決戦前夜の様相だ。販売提携を発表する企業は後を立たない。頭の中はライバルの料金戦略で一杯・・そんなビジネスパーソンも少なくない。

 他方、日経テクノロジーオンラインのエネルギー分野の2015年の記事アクセスランキングトップは【第1部:全体動向】“地上の太陽”にあと一歩、2020年代前半にも実用化か」。夢の発電技術、核融合発電をテーマにした記事だ。核融合発電は第8位にもランクインしている。ちなみに第2位は水素をテーマにした記事だった。

 いずれも足元のエネルギービジネスには、まだ遠い世界だ。だが、テクノロジーでイノベーションが起きなければ、電力自由化は画餅に帰してしまう。大規模な規制緩和の成功例と言われる通信自由化は、ブロードバンド技術によるインターネットの普及・拡大というイノベーションがあったからこそ。新しい技術が旧来のコスト構造などを壊してこそ、成功が見えてくる。

 エネルギー領域の技術革新には時間がかかる。目先の発電所投資すら、一声10年だ。そう考えると、核融合や水素は、さほど遠い世界ではない。

 ちなみに、その他のトップ20記事は、半分が太陽光発電。そして、残り半分がリチウムイオン電池や空気圧縮などの蓄電技術だった。この2つは、現在の電力システムの構造転換を誘発する可能性が高いと言われている技術だ。

 電力自由化が近視眼的な安売り競争で終わるのではなく、新規参入する小売電気事業者が、技術進化をサービスに取り込み、新しい価値を提供することを期待したい。

国の助成で進められている核融合発電技術の今後のロードマップ
国の助成で進められている核融合発電技術の今後のロードマップ
「“地上の太陽”にあと一歩、2020年代前半にも実用化か」より
記事アクセスランキング2015【エネルギー】(2015年1月1日~11月30日)
1 【第1部:全体動向】“地上の太陽”にあと一歩、2020年代前半にも実用化か
2 水素社会は切り札論、急浮上の不可思議
3 鬼怒川の氾濫で太陽光設備が浸水、建設時の工事に問題視も
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