いささか古い話で恐縮だが、2004年1月11日の朝日新聞(東京版)に次のような記事が載った。大阪府守口市の会社員と枚方市の大学生が大阪府警察により窃盗容疑で摘発されたというのだ。この二人「デンキを盗んだ」というから、電器店から電器(つまり、電気器具)か何かを万引きでもしたのかと思ったら、違っていた。ではいったい何をしでかしたのか。

ケータイも電池なければただの箱

 実は、屋外のコンセントから「電気を盗んだ」というのだ。被害額は共に1円程度だが、見逃すわけにはいかないとして警察が摘発した。 

 調べによると、会社員は門真市の飲食店の看板用コンセントを使って、携帯電話機に5分ほど充電した疑いだ。大学生は京阪電鉄の枚方市駅前で踊りのパフォーマンスをしていたが、その際、スーパーの自動販売機のプラグをコンセントから抜いて、その代わりに音楽を流すために持参していたラジカセをつないで電気を盗んだという。どちらの場合も電池が切れてしまったのだろう。 

 ポータブル機器全盛の現代においては、電源としての電池、特に2次電池が不可欠の存在だということを、この記事はあらためて感じさせてくれた。「ケータイも電池なければただの箱」というわけだ。 

 このような背景を踏まえ、今や2次電池として最も重要な位置を占め、近い将来の電気自動車用駆動源としても期待されているLiイオン2次電池(以下、LIB)について解説していきたい。