「日経エレクトロニクス」の記事を肴に産業界や社会の将来像を語り合う対談の第2回。前回に引き続き、同誌5月号の特集記事「出番だ! 蓄エネ」をテーマに、3.11以降、日本社会の大きな関心事になったエネルギー問題について語り合う。
(前回から読む)
川口 「家庭に発電する端末を置いて、電気を蓄えて…」という発想は、社会全体で見て効率がいいとは思えないでしょう?
送電ロスがあるので「どこに電力をためておくか」については、きちんと最適化しなければなりません。さらに、水素貯蔵まで話を持っていくと、またそれが目的化している印象があります。「ためたものを別の場所に持っていって、燃料として使えるようにしましょう」という色気が出ている。普通に産地の近くでシステムが閉じていてよさそうなのに。家庭からの売電についても、見掛け上は発電するモチベーションが働くという理屈はあるけれど、勘定が合わないはずでは。
山本 大規模な商業施設やオフィスビルなどで発電と蓄電池を組み合わせるような取り組みは以前からありましたし、工場でも廃熱を回収する仕組みもあって、当然ありですよね。ただ、家庭でコジェネを使うような仕組みを有望と言ってしまうこと自体、あまり効率を考えていないのではないかと思ってしまいます。発電したって、そもそも浮いている熱量自体が少ないから、蓄積したり売電したりする必要はないんですよ。それは効率が悪くなる。
今井 家庭に押し付けるのではなく、事業所単位でコストを負担して、ある程度の規模感でやったほうがいいということですね。
山本 そうです。
川口 3.11のときにも、六本木ヒルズの周辺は明るかったものね。独立した発電施設があるから。
今井 家庭向けに何百万円かで蓄電池を売りますという話は、あまり考えない方がいいと。
川口 それは、逆に地球環境のことを考えていないような印象ですよね。そもそも30年保証と言われても、家の屋根がもたないわけで。
山本 今、逆に向かっていますよね。工場ごとにたくさん発電装置を持っていた企業が、運用コストに見合うリスク対策になってないという判断が出ることが多いらしく、償却してやめ始めています。