半導体関連の3つのサイト、「半導体デバイス」、「半導体製造」、「EDA」に投稿の全記事(日経BP半導体リサーチ記事を含む)を対象に、直近4週間(2013年5月7日~6月2日)でアクセス数が多かった20本を紹介する。5月には過去に掲載したものを含めて、半導体の先行きを占うような連載記事を複数掲載した。これらを多くの方に読んでいただいた。
最も読まれたのは、連載「半導体のコストダウンは止まるのか」の中の「業界動向編(2)逃げ道がない論理LSI 」である(この記事は、日経エレクトロニクスの2012年11月26日号に掲載したもので、今回、Tech-On!に掲載した)。記事によれば、メモリに比べて微細化のペースは遅いものの、製造のコストダウンに関して、実は手詰まり感が最も強いのがマイクロプロセサやSoC(system on a chip)などの論理LSIである。
メモリとは異なり、微細化に代わる決定的なコスト低減手法が存在しないからだ。そこで、論理LSIではまったく新しい製造技術の導入が切望されている。具体的にはEUV(extreme ultraviolet)露光と、Siウエハーの450mmへの大口径化だ。
EUV露光は13.5nmという短い波長の光を使って線幅10nm台のパターンを1回で解像する技術。リソグラフィ・コストの上昇を抑える決定打になる。一方、450mmへの大口径化では、Siウエハー当たりのチップ取得数を増やすという方法でコスト低減を狙う。これらの技術を2010年代半ば~後半に実用化できれば、年間約30%というこれまでのコスト低減ペースを取り戻せそうだという。
2番目に読まれたのは、半導体の製造で世界をけん引する企業の一つ、台湾TSMCの直近の決算発表をベースにした記事である。記事では、同社の2013年第1四半期の連結ベースでの売上高が1327億5500万NTドルと対前年同期比で26%も伸ばしていることが報告されている。
また、ここしばらくはTSMCが優位な状況にあるとの指摘もある。「TSMCについて極端な話をすれば、米Intel社と韓国Samsung Electronics社以外のどの半導体企業が勝者になろうと、当面の間はTSMCが恩恵を受ける枠組みが出来つつある」(記事の著者である、ドイツ証券の中根 康夫氏)。これはTSMCが、28/32nmプロセスにおける圧倒的な市場シェアと十分な歩留まり、20nm以降への万全の備え、米Apple社向けの供給開始、ARMコア・ベースのプロセサ(サーバーやノート・パソコン向け)、ミドルからローエンドのスマートフォン、タブレット向けLSIなど今後の成長市場の獲得、などを実現していることによるという。
3番目に読まれたのは、連載「スマホ/タブレットの将来が分かる! 最新モバイルプロセッサ動向」の第1回の記事である(この記事は、ITproの特集「“次”のスマホが見えてくる!スマホ/タブレットのプロセッサ最新動向2013春」から転載したものである)。記事のタイトルは「低価格化と高性能、両極を要求されるスマホのプロセッサ」である。世界最大のモバイル関連の展示会「Mobile World Congress(MWC)2013」(2013年2月25日~28日にスペインで開催)での取材を中心に、テクニカルライターの塩田 紳二氏がアプリケーションプロセッサのこれまでおよびこれからの技術動向をまとめた。
例えば、同氏によれば、2012年に続き、2013年のスマートフォンのプロセッサの大きなテーマの一つは低コスト、低価格である。ただし2012年と2013年の低価格スマートフォンのプロセッサのテクノロジーでは、アーキテクチャに大きな違いがある。2012年には「ARMv6」アーキテクチャで可能だったシステムが、2013年には「ARMv7」アーキテクチャが必要になった。具体的には、2012年の低コストなスマートフォンのプロセッサには「ARM11クラス」(アーキテクチャはARMv6)が搭載されていたのに対して、2013年に登場しているスマートフォンでは、「Cortex-A5」(ARMv7)が採用されている。