「NANDフラッシュ・メモリはこれまで、微細化さえしていればコストを下げられたが、それが行き詰まってきた。非常に厳しい状況だ」。

 2012年10月に催された「CEATEC JAPAN 2012」。その基調講演に登壇した東芝の齋藤昇三氏(代表執行役副社長 電子デバイス事業グループCEO)は、NANDフラッシュ・メモリの大手メーカーである同社が直面している危機を率直に認めた。

 NANDフラッシュ・メモリはスマートフォンやタブレット端末のストレージを一手に担い、ノート・パソコンやサーバーでもHDDを置き換えつつある。メモリ・メーカーが微細化を競い、速いペースでコスト低減を進めてきたことが躍進の背景だ。

 そのNANDフラッシュ・メモリが今、微細化を阻む厚い壁にぶち当たっている。チップ面積を小さくすることで得られるコスト・メリットを、リソグラフィなどの製造コストの増分が相殺するようになってきたのだ。

 DRAMや論理LSIでも状況は変わらない。製造コストが上昇し、微細化のメリットは急速に薄れつつある。

 このように、デバイスによらず、コスト低減の王道である微細化の威力にハッキリと陰りが見えてきた。機器メーカーにとっては「半導体メーカー側でのコスト低減を前提にした値下げ交渉が難しくなる」(野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクターの和田木哲哉氏)可能性がある。

 この状況を打開するためには、あらゆるコスト低減策を総動員しなければならなくなる(図1)。メモリでは「3次元化」がその中心的な役割を担いそうだ。これに対し、論理LSIではこの手法がコスト低減にはつながりにくい。そこで、製造技術をガラリと変える必要に迫られている。

図1 あらゆる手段でコストを低減
微細化のコスト低減効果が薄れてきたことから、あらゆる手段を結集してコストを低減する必要が出てきた。2010年代半ば以降に向けては、EUV露光や450mmウエハーの実用化に向けた取り組みが活発になっている。
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