EUV露光技術の開発は遅れに遅れている。最大の理由は、EUV光源の出力が上がらないことだ(図14)。量産時に必要とされる125枚/時の処理速度(スループット)を達成するためには、露光装置への光投入口(中間集光点)におけるEUV光の出力を250Wに高める必要がある。これに対し、現状の出力は10~20Wと1桁低い。瞬間的には100Wの出力も報告されているものの、連続発光時間(バースト時間)が短く、露光に必要な平均出力では10~20Wという水準にとどまっている(図15)。
EUV光の出力は過去5年間、ほとんど増えていない。これは、EUV光を高出力化する以前に、光源を安定稼働させるのに精いっぱいだったからだ。例えば、ASML社は2010~2011年にデバイス試作用EUV露光装置「NXE:3100」を計6台出荷した注1)。ところが、EUV光源が安定して稼働せず、半導体メーカーや研究機関は計画通りに露光実験ができなかったという経緯がある。
EUV光源の安定稼働が難しい理由はさまざまだが、例えば長時間にわたってEUV光を発生させると、光源内に膨大な熱が蓄積し、各種パラメータがずれてしまうという問題がある。この問題はEUV光の出力が高いほど深刻化する。このため、EUV光源メーカーはここ数年、安定稼働のための技術開発に注力してきた。その結果、EUV光源の出力はほぼ横ばいで推移したが、安定稼働に向けた取り組みは着実に前進している。
現在では「1日当たり100枚以上のウエハーを安定的に露光できる状況」(EUV光源メーカーの米Cymer社)になってきた。1日の稼働時間を20時間とすると、5枚/時のスループットに相当する。量産に必要な125枚/時には程遠いものの、「光源が稼働せず、露光実験が計画通りにできない」といった事態は回避されつつある。露光実験が進めば、レジストやマスクなどの技術開発も前進すると考えられる。
注1)出荷先は、Intel社、Samsung社、TSMC、東芝、韓国SK Hynix社、ベルギーIMECとみられる。