今週のニュース・ランキングでは,自動車や携帯電話機といった派手目な話題を押しのけ,ルネサス テクノロジの研究開発体制に関する記事が見事4位に入りました。このところ景気の悪い話が続く中で,タイトルにも表れた威勢のいい内容が読者を勇気づけたのかもしれません。記事を読んでいて一つ気にかかったのは,後半に書いてある「付加価値向上」の方策が今ひとつ分かりにくかったことです。前半の設計の効率化と比べると,どうも歯切れが悪い気がします。激しい競争を勝ち残る上で,どちらがより重要かといえば,やはり付加価値向上の方でしょう。

 国内半導体メーカーは,ずいぶん前から「設計力強化」を訴え続けてきました。最近筆者は訳あって日経エレクトロニクスの過去記事を読み返しているのですが,20年以上前の1986年7月28日号で,創刊400号目を記念して同誌が編んだ大特集のテーマが「LSI設計」でした。このころから,半導体の設計力がこれからの競争の鍵だとみなされてきたのです。それにも関わらず,現状で国内半導体メーカーの設計力は世界で群を抜くとまでいえるでしょうか。

 逆にいえば,設計力強化は一朝一夕には解決できない極めつけの難問ということなのでしょう。400号の特集記事の片隅にこんな表現を見つけました。「本づくりにたとえると,設計は編集に当たり,製造は印刷に相当する」。筆者は設計のことは皆目分かりませんが,編集の仕事はかれこれ20年近く続けてきました。それでも,編集に必要な,付加価値の高い企画力や発想力を簡単に強化できる方法があるならば,のどから手が出るほど知りたいです。それさえあれば,この原稿に何時間も費やしたあげく,こんなオチしか思いつかない我が身を嘆くこともなかったでしょう。

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