Google社が,携帯電話の市場に参入した。インターネットに接続できる携帯電話機の開発に必要なOSなどを無償で誰にでも提供する。携帯電話事業者や端末メーカー,半導体企業やソフトウエア開発者などはおおむね歓迎の意を表する。無償なだけでなく,サービスとの親和性やオープンソース方式の開発手法などの魅力があるからだ。ただし,これらは諸刃の剣だ。サービスの提供や機器の開発に参入した第三者に,主導権を奪われかねない。話は携帯電話機にとどまらず,ネットにつながるあらゆるデジタル機器に広まる可能性がある。(以下の本文は,『日経エレクトロニクス』,2007年12月17日号,pp.50-53から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 「Androidの開発にいくら投資したかは言えない。ただし,これだけははっきりしている。AndroidはGoogle社にとって非常に重要なプロジェクトだ。当然,莫大な金額を投入している」(米Google Inc.,Director of Mobile PlatformのAndy Rubin氏)。

 Google社が,携帯電話ビジネスに参入した。携帯電話機のソフトウエア・プラットフォーム「Android」を無償で誰にでも提供することを2007年11月に発表(図1)。Androidを利用する携帯電話機は,2008年後半にも登場するという。台湾HTC(High Tech Computer)社,韓国LG ElectronicsInc.,米Motorola,Inc.,そして韓国Samsung ElectronicsCo.,Ltd.の4社が口火を切る予定である注1)。これらの製品を皮切りに,Androidは業界標準の座を目指す。

注1) 4社はQualcomm社のデュアルコア構成による携帯電話機向けチップセット「MSM7000」シリーズを採用した高級機種を発売する計画。その後,より普及価格帯の機種にまで,Androidを適用していくという。

図1 ひたすら「無償化」に突き進む Google社はこれまで,各種のサービスを消費者に対して無償で提供してきた。Webサイトの検索や電子メール,動画コンテンツの配信などである。同社は今回,携帯電話機の開発者向けに,携帯電話機のソフトウエア・プラットフォームを無償提供する。これによって携帯電話機の開発コストを低減できるという。デジタル家電向けのソフトウェア・プラットフォームとしても,Androidの利用を促す意向である。
図1 ひたすら「無償化」に突き進む Google社はこれまで,各種のサービスを消費者に対して無償で提供してきた。Webサイトの検索や電子メール,動画コンテンツの配信などである。同社は今回,携帯電話機の開発者向けに,携帯電話機のソフトウエア・プラットフォームを無償提供する。これによって携帯電話機の開発コストを低減できるという。デジタル家電向けのソフトウェア・プラットフォームとしても,Androidの利用を促す意向である。 (画像のクリックで拡大)