「今年のFPD International,面白かったよ」。何人かからこういう感想を聞きました。かくいう私もその一人。会場にこそ出向けませんでしたが,特設サイトに上がる記事を眺めているだけでも,わくわくした気分に伝染してしまいそうでした。

 薄型ディスプレイ関連の総合展示会FPD Internationalは,Tech-On!が主宰者側として関わる中でも最大級のイベントです。しかし,今年はちょっと盛り上がりに欠けるんじゃないかという懸念が事前にありました。薄型テレビにとって,数年に一度の大商戦だった北京五輪が終わったかと思えば,瞬く間に金融危機が世界各国を侵し,多くのメーカーが業績の下方修正を余儀なくされました。何よりも,大画面化や薄型化といった,これまでディスプレイの需要拡大を下支えしてきた契機の陰りが顕著です。そんな中で,メーカーの開発意欲は衰えていないでしょうか。

 少なくとも展示品のニュースを見る限り,この心配は杞憂だったようです。個人的には,昨年の展示会よりも面白いネタが多かったのではと,密かに思っているほどです。何しろ,「はためくディスプレイ」「窓がディスプレイに」「量産に近い3m×1mのフィルム状ディスプレイ」「両面に異なる表示」「額縁が見えない」などなど,字面を見ているだけでも想像力をかき立てられませんか。「傍観者が何気楽なこと言ってるんだ。現場はそれどころじゃない!!」と怒られるかもしれませんが,ひととき手元の商売を忘れて,思いも寄らなかった未来に夢を馳せるのは,技術者の方も大好きでしょう。

 このような新機軸が続々登場してきたことは,大画面化や薄型化の息切れと無関係ではありません。これらが行き詰まったからこそ,新しい成長の軸を見つけようと,各社が様々な方向に手を伸ばしているのでしょう。つまり,先が見えないからこそ,新しい何かを求めて開発が活発になっている。誰よりも先に答を見つけた企業が,次の時代の勝者になれるわけです。

 これって,何だか「不況のときこそ,投資の好機」とみなす,半導体投資の話に似ていませんか。ちょっと心配なのは,目新しい話題の中心にいたのが,どちらかといえば日本メーカーよりも海外勢だった気がすることです。半導体投資の話のように,「市場が冷え込んだときは,開発もちょっと抑え気味に」などと,判断していなければいいのですが。

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