日本やヨーロッパでは,全CO2排出量の20%前後を輸送分野が占めている。国土の広い米国ではもう少し高い比率になるようだ。高速道路を昼夜わかたず走り続ける長距離トラックは,その中でも大きな比重を占めている。大型トラックは乗用車と違い,電動化やハイブリッド化が困難なので,この用途(長距離貨物輸送)でのCO2削減策として鉄道輸送の見直しが始まっている。

 実際,鉄道貨物輸送の復興を感じさせるニュースをときどき耳にするようになった。昨年の秋に,三井物産がシベリア鉄道を利用した日本企業向け貨物輸送事業を開始すると発表したが,実際にこれを利用した自動車(完成車)の輸送が2009年から始まるという。マツダがロシアで販売するクルマの約3割に当たる5万台を,シベリア鉄道経由でモスクワ方面に輸送するとのことだ。

 もっとも,このシベリア鉄道を使ったクルマの輸送,必ずしも環境対策を優先して行われる訳ではない。通常は船便を利用しているので,輸送コストだけ見ると鉄道の方がかえって割高になるのだ。輸送コストが高いということは,たいていの場合,エネルギー消費量が多いということである。コストは高いが,輸送の時間を半分に短縮できるのがメリットなのだと言う。

 飛行機やトラックで運んでいるものを代替する場合には,鉄道輸送はずいぶんCO2削減に寄与することだろう。マツダも日本国内では,環境対策としてサポート用部品などの輸送を,トラックから鉄道に切り替えている。単純に同じ重さのものを同じ距離だけ運ぶ場合,鉄道は自動車の1/10ぐらいのCO2排出量で済むというデータもあるようだが,実際には空荷率の問題や駅からのトラック配送などの問題もあり,そんなに極端には効かない。マツダの場合も,鉄道へのシフトで目指すエネルギー節減量は,年間数10%のレベルという。