過去の栄光と、現在につながる蹉跌。

 Tech-On!のテーマサイト「家電・PC」の2013年3月12日~4月8日、ほぼ1カ月間のアクセスランキングに現れたのは、国内の家電メーカーの状況を示す、こんなキーワードでした。

 ランキング上位に食い込んだのは、連載コラムの「携帯型DVDプレーヤー」の開発ストーリー。1990年代後半に、松下電器産業(現・パナソニック)で繰り広げられた光ディスクの開発の様子を取り上げた記事です。(関連記事「半年でやらんかい、半年で」「回路屋がおらへんのです」)

 時は、「家電のデジタル化」「情報型家電」といったフレーズが、何となく世の中に出始めたころ。パソコンからデジタル家電へと技術のけん引役が変わる。これからは我々の時代だと、日本の家電業界は元気はつらつでした。記事からも、その時代の熱や勢いを感じていただいているのかもしれません。(関連記事「ネットワークが,新しいビジネス・モデルを産む」)

 そして、現在。

 ランキング14位に入ったのは、パナソニックの経営方針説明会の記事。同社は2013年度の事業方針と2015年度までの中期計画を公表しました。そのプレゼン資料には「赤字事業の止血」という言葉。重点施策の筆頭として掲げた目標です。(関連記事「パナソニック津賀社長、『PDPテレビや携帯電話機はできる限り事業継続に努める』

 その中で「止血が必要」として取り上げられている事業は、開発ストーリーの内容とも関連して、携帯型DVDプレーヤーの開発が進んでいた時代に元気だった、あるいは事業が大きくなったものでした。例えば、当時松下電器がDVDプレーヤー向けに開発し、「メディアプロセサ」と呼ばれて話題になったMPEG-2のコーデックLSI。止血のために富士通と統合するシステムLSI事業につながる系譜上のLSIです。(関連記事「ソニーと松下電器産業が半導体メジャーになる日」)。

 そもそも、CDやDVDという花形商品を生み出した光ディスク用の駆動装置と光ピックアップの事業も、止血が必要な五つの事業の一つとして数えられています。この事業についてパナソニックは、海外メーカーなど他社への生産委託の拡大と国内の生産拠点を再編するという考えを示しました。

 この間、ちょうど15年ほど。その様変わりには隔世の感があります。

 現在につながる蹉跌は、どこで生じたのか。さまざまな角度からこれを検証する記事は、Tech-On!はもちろん、巷の多くのメディアを賑わせています。正解は、一つではないのでしょう。未来を見据えた取り組みに加え、歴史を振り返り、分析する温故知新が必要になるに違いありません。今、家電メーカー各社が取り組む止血が、新しい世界初のヒット商品を世に送り出す土台になることを期待したいところです。

 実は、もう一つ冒頭のキーワードが隠れた記事がランキングにはありました。