日経エレクトロニクスの創刊700号では,701号と合わせた2号連続特集として,当時成熟に向かいつつあったパソコンに続く電子産業の牽引役を探った。前半の700号の特集は「コネクテッド・ホーム」と題し,ネットワークに繋がった情報型家電が成長の鍵を握ると予言した。12年前のこの記事が予測した将来像は,いくつかの相違点はあるものの,現在までにほぼ実現している。(2009/05/01)
21世紀のエレクトロニクス産業をけん引する次世代の大型ヒット商品を,パソコン業界と民生機器業界の両方が探し求めている。その候補の筆頭は,パソコンとAV(オーディオ・ビジュアル)機器の機能を併せ持つ「情報型家電」だ。情報型家電は従来の民生機器と違い,ネットワークに接続されている。このネットワークの使い方いかんで,新しいビジネス・モデルを打ち立てられる。製品の販売後も継続的に消費者から料金を徴収する仕組みを作れる。「民生機器は売り切り製品」という既成概念から脱却できる。
21世紀を目前にしてエレクトロニクス業界に大きなビジネス・チャンスが訪れようとしている。
エレクトロニクス業界が時代の寵児として期待をかける「情報型家電」は,双方向ネットワークの機能を備えた次世代の民生機器だ。双方向ネットワークを使って,世界の情報発信者と家庭をつなぐ。いわば「コネクテッド・ホーム」注1) (Connected Home)を作り上げる。映画や写真,音楽,ゲーム,アプリケーション・ソフトウエア,インターネットの情報といったあらゆるコンテンツが情報型家電を介して家庭にやってくる(図1)。
注1)米Intel Corp.はネットワークに接続されたパソコンを「Connected PC」と呼ぶ。さらに自動車内にネットワークを張り巡らす技術を「Connected Car PC」と名づける。これらをもじって本誌は,ネットワークで世界の情報提供者とつながった家庭を「Connected Home」と呼ぶ。