洞窟物語の画面例
洞窟物語の画面例
[画像のクリックで拡大表示]

 当ブログ、毎回どんなネタを書くか編集部一同、結構悩んでいます。最新記事を紹介すべきか、はたまたセミナーを告知するか。それとも全く関係ない話題を書くか。今回もいろいろ悩んだ挙げ句、タイトル通り、「ゲーム」にまつわるお話を紹介したいと思います。

 まずご紹介するのは「洞窟物語」というゲームです。その名の通り、洞窟内を探検する、いわゆる横スクロール型のアクション・ゲームです。このゲーム、「スーパーマリオ」や「Angry Birds」という超弩級のヒット作と比較すれば知名度はまだまだですが、知る人ぞ知る名作です。

とはいえ、おもしろいゲームならいろいろあります。この洞窟物語が特徴的なのは、ある人物が一人で開発したという点です。しかもゲーム開発者ではなく、ソフトウエア技術者があくまで趣味で作成したものです。

 それ故、最初はWindowsパソコン向けの無料ゲームとしてリリースされました(ダウンロード・サイトその1ダウンロード・サイトその2)。それから約7年が経過した現在では、少なくとも22万回以上ダウンロードされています。

 もちろん、無料ということもありますが、大手のゲーム会社に所属していない“一般人”が作成し、リリースしたゲームとしては快挙言えるダウンロード数です。特に海外ユーザーからの支持が大きい。米国では、「Wiiウェア」や「DSiウェア」を始め、3DS版の洞窟物語(「Cave Story 3D」)も販売されています(紹介ページ)。日本でもようやく「DSiウェア」として、2011年11月22日からダウンロード販売が始まりました(価格は1000円)(紹介ページ)。

 と、ここまであたかも古参のファンのように書いておりますが、実は私はにわかファン。洞窟物語の存在を知ったのは今年の初めです。具体的に言えば、2011年2月28日から3月4日まで米国ロサンゼルスで開催されたゲーム開発者向け国際会議「GDC 2011」の場でした(関連記事1関連記事2)。目当ての取材をほぼ終えたGDC最終日、私はどの講演を聞くかどうかプログラムを見ていたところ、ふと、見慣れない日本人名を目にしました。誰だかまったく分かりません。しかも、有名企業からの発表でもない。しかし「招待講演」となっている。不思議に思った私は、とにかくその講演に参加してみました。

 そこで出会ったのが「洞窟物語」です。登壇者は作者の天谷大輔氏(ハンドル名はPixel)(同氏のホームページ)。天谷氏は緊張しながらも、自ら開発した洞窟物語の経緯や狙いなどを、おだやかに、しかし楽しそう(私にはそう見えました)に語っていたのが印象的でした。興味を持った私は講演後、天谷氏に話を直接聞こうとしました。ですが、何人もの参加者が同氏の周りに集まっており、お話を伺えたのは日本に帰国してからでした。

 そして天谷氏へのインタビューや、同氏を手伝った方たちのお話などを基に、開発ストーリーとしてまとめ、弊誌の「ドキュメンタリー」というコラムに掲載しました(掲載号1同2同3)。なぜ洞窟物語が誕生したのか、なぜ海外でも人気となったのか、そして作者の天谷氏とはどんな人物なのか。こうしたことにもしご興味を持った方がいらっしゃれば、ご一読いただければ幸いです。

 ちなみに、アクション・ゲームが苦手な私は、パソコン版の洞窟物語は途中で挫折してしまいましたが、現在DSiウェア版を遊んでいます。DSiウェア版は難易度を調整できるので、通常よりも簡単なモードでクリアを狙っている最中です。

ゲームのチカラを他分野へ


 さて、ここからは別の話題へ。突然ですが、「Gamification(ゲーミフィケーション)」という単語はご存知でしょうか。と、またもや偉そうに書いていますが、私が知ったのも最近です。前述の洞窟物語と同じく、GDC 2011の講演でした。

 ゲーミフィケーションの言葉の定義は、人それぞれやや異なるようですが、平たく言えば、ゲーム制作の優れたノウハウをゲーム以外の分野で活用することを指します。ゲームは、ユーザーを夢中にさせて没頭させるためのノウハウの塊です。これをゲームだけでなく、Webサービスや機器の開発、社会問題の解決などに生かそうという試みです。

 どうやらゲーミフィケーションという単語に注目が集まり始めたのは、昨年からのようです。米国を中心に盛り上がりを見せています。それ以前から、ゲーム制作のノウハウを他分野へ生かそうという考え方はありました。例えば、教育や医療の場、そして環境破壊などの社会問題の解決を図る「シリアスゲーム」や、立命館大学教授のサイトウ・アキヒロ氏が提唱する「ゲームニクス」などです。

 私自身も、ゲーム制作のノウハウを機器開発に生かせないのか、という点に興味を持っていました。きっかけは2010年に登場した「プレイステーション 3(PS3)」用地デジ視聴・録画キット「torne(トルネ)」です。torneでは、「マニュアル不要な分かりやすさ」や「気持ちいい応答」、「効果的な演出」といったゲーム制作のノウハウを活用し、快適で楽しい操作を実現しています。実際触れてみると、一般的なHDDレコーダーよりも「サクサク」としており、操作は快適そのものです。売り上げも順調で、少なくとも40万台以上を出荷しています。このtorneは、ゲーミフィケーションの成功例だといえます(関連ブログ1同2関連記事開発ストーリー)。
 
 このように、ゲーム制作のノウハウを他分野に利用するという考え方やその実例は以前からありましたが、「ゲーミフィケーション」という一種のバズワードが登場したことで、その考え方がさまざまな分野に浸透しつつあります。もちろん、エレクトロニクス業界も例外ではありません。

 ということで、弊誌11月28日号では、このゲーミフィケーションについて取り上げました(関連記事)。ゲーミフィケーションの適用範囲は広いので、同号ではエレクトロニクス業界に関連性がある事例を取り上げ、ゲーム制作のノウハウがどのように活用されているのか、などについて紹介しております。こちらも、ご興味のある方、ご一読いただければ幸いです。