人を思わず夢中にさせるビデオ・ゲームの制作ノウハウを、他分野に生かそうという取り組みが注目を集めている。エレクトロニクス業界では、既にAV機器やカーナビ、サイネージ機器などでの採用が始まった。単なる高性能・高機能化では電子機器が売れなくなった時代に、ゲーム制作のノウハウはその閉塞感を打破する特効薬になりうる。

トイレにゲームを持ち込み、売り上げ増

 若手社員「課長、勢い、量ともに課長を超えました。記録更新です!」 課長「なに?! よし、もう一杯飲むか。記録を塗り替えてやる。あっ、店員さん、生ビール大ジョッキ追加で!」

 仕事帰りの居酒屋で、男たちがある機器を使って熱戦を繰り広げている。舞台はなんとトイレ。セガが開発した、用を足しながらゲームを楽しめるトイレ用のサイネージ機器「トイレッツ」が、男たちを熱くさせているのだ。

 トイレッツでは、放出された尿の速度や量などを算出し、そのデータを元にゲームを楽しめる。具体的には、野球のスピードガンで用いるマイクロ波センサを利用して、尿の速度を算出し、尿の量などを推定する。例えば、尿の放出速度が速かったり、量が多かったりすると、対戦ゲームで勝利できる。

 1~2分間同じ場所に立ち続けるという性質から、男性用小便器の上に設置するポスター広告などは以前からあった。セガはそこにゲーム性を持ち込み、ユーザーの競争心やゲームを楽しみたくなる心理を刺激することで、広告効果の向上を狙った。

 トイレッツでは、ゲーム中やゲーム終了直後に表示される結果画面の中に、飲食物の広告情報などを提示する。例えば画面内に「ビール大ジョッキ、今なら××割引」などと書いておけば、ゲームに敗れたユーザーは「もう一杯」となってしまう。

『日経エレクトロニクス』2011年11月28日号より一部掲載

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