SCEの「torne(トルネ)」は,PS3で地デジの視聴・録画を可能にする周辺機器である。その操作の「快適さ」や「楽しさ」がユーザーに受け入れられて,PS3の周辺機器としては異例のヒットを飛ばしている。
この快適さと楽しさは,どこからもたらされたのか。専門家と共に分析した。

「楽しさ」でtorneの価値を再認識(写真:SCE)

 東京の新宿駅近く,2010年3月18日朝。開店前の電器量販店に100人を超える人々が列を成した。同日に発売されるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「プレイステーション3(PS3)」向け地上デジタル放送用視聴・録画キット「torne(トルネ)」を買い求める人々である。発売前からユーザーの注目を集め,一部の店舗では,事前予約分だけで発売日入荷分が売り切れた。SCEによれば,初期出荷分はすぐにほぼ完売。現在,順次製品出荷を続けているが品薄状態が続いているという。SCEは出荷数量を明らかにしていないものの,累計で数万台規模とみられ,ゲーム機の周辺機器としては異例のヒットと言える。

従来と全く異なる操作感

 torneは,USB接続の小型地デジ・チューナーと,PS3で動作する視聴・録画ソフトウエアから成る。このソフトウエアを利用することにより,PS3で地デジを視聴したり,PS3内蔵HDD(あるいは外付けHDD)に録画して再生したりできる。これだけを見る限り,あっと驚く機能はない。そんなtorneがなぜ,これほどの注目を集めたのか。

 最大の魅力は,快適な操作を実現したGUIにある。例えば,番組表の拡大/縮小や,選択カーソルの縦横への操作を目にも留まらぬ速さで実行する。番組検索でキーワードを入力すれば,瞬時に検索結果のリストが表示される。torneでの操作感は,これまでのテレビやHDDレコーダーとは「全く異なる」(国内大手電機メーカーのテレビ開発者)ものである。

『日経エレクトロニクス』2010年4月19日号より一部掲載

4月19日号を1部買う