用語解説

 ポリアミドはナイロンとも呼ばれ,モノマ内にアミド基を持つポリマである。ナイロンが発明されたのは1930年のことで,米Du Pont社のウォレス・カローザスが発見者である。当初は繊維材料として開発され,ナイロンストキングとして爆発的に普及した。その後,1950年代に成形用のグレードが開発され,最初のエンジニアリングプラスチック(エンプラ)として,家電,電子部品,自動車部品に広く使われている。

 ナイロンの分子構造は,重合の方法から「PA6」「PA66」(それぞれナイロン6,ナイロン66とも呼ばれている)の2種に大別される。PA6はε-カプラクタムを開環重合させてつくるのが一般的。一方,PA66はアジピン酸とヘキサメチレンジアミンを重縮合させてつくる。

 PAは耐衝撃性や耐薬品性に優れ,荷重たわみ温度も比較的高い。この荷重たわみ温度が高いのは,モノマ同士が水素結合しているため。このため,融点はPA66の方がPA6より約40℃高く,荷重たわみ温度も高い。

 PAの欠点は,吸水による成形品の寸法変化である。自動車用コネクタでは,この欠点が影響してPA66からPBT(ポリブチレンテレフタレート)への材料の切り替えが起こった。

供給・開発状況
2005/10/14

《供給動向》中国など海外生産計画が目白押し

 電気・電子機器メーカー,自動車メーカーの海外進出に伴い,国内ナイロンメーカー各社も海外生産を進めている。ナイロン6最大手の宇部興産は,タイととスペインで生産を開始している。三菱エンジニアリングプラスチックは台湾でナイロン6の生産を行っているが,さらに中国での生産を計画している。ナイロン66最大手の旭化成ケミカルズも中国での生産を計画中。海外の中でも今後大きな需要の伸びが期待できる中国への海外進出が活発化しているようだ。

《開発状況》芳香族系,ナノコンポジット,新難燃グレードなど材料開発が盛ん

 ナイロン6,66に続いて,芳香族ナイロンの品揃えが進んできた。第一の目的は耐熱性の向上である。芳香族成分としてテレフタル酸を加えたものが多い。融点が300℃を超す耐熱性を活かして,表面実装用のコネクタや自動車のエンジン回りの部品などに採用されている。最近では,ガラス繊維が表面に出ないように工夫した良外観グレードの開発も活発化している。

 ナノテクノロジーの進展により,nmサイズの無機フィラーをナイロンに添加した「ナノコンポジット」の開発も進んでいる。先行したのは宇部興産で,同社はトヨタ自動車との共同開発により,クレイ系無機フィラーを添加したナイロンを開発,自動車部品に採用されている。フィラーのサイズが小さくなることによって表面積が増大し,フィラーとポリマー間の相互作用が強化されることによって,剛性,耐熱性,寸法安定性,ガスバリヤー性など様々な特性が向上することが分かっている。耐熱性や剛性の高さを活かして自動車のエンジンカバーに使ったり(図),ガスバリヤー性を活かして燃料チューブに採用が始まっている。 

 難燃グレードにはこれまで,臭素系難燃剤であるポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)が使われてきたが,焼却炉の高温下でダイオキシンが生成する可能性があるとして,環境面から特に欧州で問題視されてきた。2006年7月にEUで施行される「WEEE/RoHS指令」では,PBDEは規制対象となった。PBDEの内,デカブロモジフェニルエーテル(通称デカブロ)は規制対象物質からは除外されたが,ユーザー企業には使用を避けたい考えだ。  

 ハロゲン系難燃剤の代替材料としてV-0が可能なものとして各社はリン系を開発し使ってきたが,ハロゲン系に比べると難燃性が低く,加えて機械的特性が劣化する問題がある。さらにリン自体が加熱時に有毒ガスを発生すると言われている。このほかの金属水酸化物系難燃剤ではV-0を持たせるのは難しい。こうしたことから,非リン系・非ハロゲン系でV-0レベルの高い難燃性を持つ新しい難燃剤として,アラミド繊維などを加える難燃グレードの開発が進んでいる。2005年中にはサンプル出荷が始まりそうだ。

ニュース・関連リンク

東レ・デュポン,非ハロゲン・非リン系の難燃ナイロン66を開発

(Tech-On!,2005年10月14日)

日本ポリペンコ,「スーパーエンプラを代替できる」帯電防止用ナイロンを発売

(Tech-On!,2005年6月30日)

どこまで進む?外板の樹脂化

(日経Automotive Technology2005年春号)