【図】非ハロゲン・非リン系の難燃剤を使ってV-0を達成したナイロン66「RuBA-R NBPシリーズ」の成形サンプル。2005年9月24〜28日,幕張メッセで開かれたIPF(国際プラスチックフェア)2005会場で
【図】非ハロゲン・非リン系の難燃剤を使ってV-0を達成したナイロン66「RuBA-R NBPシリーズ」の成形サンプル。2005年9月24〜28日,幕張メッセで開かれたIPF(国際プラスチックフェア)2005会場で
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 東レ・デュポンは,環境面で問題視されている難燃剤のハロゲンとリンを使わずに高い難燃性を持たせたナイロン(ポリアミド)66の新グレード「RuBA-R NBPシリーズ」を開発した(図)。アラミド繊維「ケブラー」を加えたのが特徴。難燃性の規格であるUL(Underwiters Laboratories)規格のV-0に合格した。2005年内には発売する予定。価格は従来の難燃ナイロンよりも「少し高めになりそう」(同社)という。

 ナイロンなどプラスチックの難燃剤としてこれまで広く使われてきたのはハロゲン系であり,中でも臭素系難燃剤であるポリブロモジフェニルエーテル(PBDE)は,電子・自動車分野など向けプラスチックの難燃性を高めるものとして普及している。特に高い難燃性を持たせたい場合には,PBDEの中でもデカブロモジフェニルエーテル(通称デカブロ)が採用されてきた。しかし,焼却炉の高温下でダイオキシンが生成する可能性があるとして,環境面から特に欧州で問題視されてきた。2006年7月にEUで施行される「WEEE/RoHS指令」では,PBDEは規制対象となった。その後,デカブロは規制対象物質からは除外されたが,今後どのような規制がかかるかもしれないという不安から,ユーザー企業には使用を避けたいという意向が強い。

 ハロゲン系難燃剤の代替材料としてV-0が可能なものとして各社はリン系を開発し使ってきたが,ハロゲン系に比べると難燃性が低く,加えて機械的特性が劣化する問題がある。さらにリン自体が加熱時に有毒ガスを発生すると言われている。このほかの金属水酸化物系難燃剤ではV-0を持たせるのは難しい。こうしたことから,非リン系・非ハロゲン系でV-0レベルの高い難燃性を持つ新しい難燃剤が望まれていた。

 今回同社が非ハロゲン・非リン系でUL V-0を達成できたのは,難燃剤として従来から使われてきた金属水酸化物に高い難燃性を持つアラミド繊維を加え,コンパウンドを工夫して最適な構造にできたためと見られる

 また同社は,V-0を達成しただけでなく,コーンカロリーメーター試験で高い難燃性を発揮したのも特徴だと強調する。火災時には火が出てから最初の5分間が勝負で,その間にいかに発煙や一酸化炭素の発生を抑えるかが重要だと言われている。コーンカロリーメーター試験はこうした火災時の状況に近い試験法だという。

 コーンカロリーメーター試験とは,試験片を電熱ヒーターで加熱しスパークにより着火,燃焼させて着火までの時間や発熱量,発煙量などを測定する。試験の結果,着火開始時間はハロゲン系難燃剤を使ったナイロン66が46秒,リン系のナイロン66が38秒だったのに対し,開発品は85秒と長かった。発熱量や発煙量,一酸化炭素発生量についてもハロゲン系よりも低い数値を示した。特に発煙濃度は,ハロゲン系が8.4/mであるのに対して,開発品は0.3/mと大幅に低かった。

 新グレード「RuBA-R NBPシリーズ」が狙う用途としては,電子機器,自動車に使われるコネクタなどの電子部品や産業用の電磁開閉器などが考えれられるとしている。