日経オートモーティブ 解説

図1●バックドアを樹脂にしたマツダ「プレマシー」
スポイラーの左右端の回り込み、
ナンバープレート左右の立体的な造形など、
樹脂ならではの形状が可能になった。

 マツダ「プレマシー」(図1)、日産自動車「ラフェスタ」(図2)、富士重工業「R1」(図3)。2004年末から2005年にかけて発表されたこれらの新型車には共通点がある。「バックドア」の外板を鋼板でなく樹脂としているのだ。
 狙いの一つは軽量化。たとえばプレマシーの場合、バックドア全体の質量は23kgほどと、鋼板製に比べて3.2kg軽くできた。燃費に対する効果はもちろんのこと、ヨー慣性モーメントを減らせる、バックゲートの開閉操作が楽になるというメリットがある。
 単純に鋼板を樹脂に置換しただけでは、大きな軽量化効果はない。樹脂化と同時に複数の部品を一体化することで、さらなる軽量化が可能になる。例えば、これまでは別体だった外装部品(スポイラーやガーニッシュ)を樹脂部品に一体化することで軽くなるばかりでなく、製造工程を簡略化することで低コスト化も実現している。また、鋼板のプレス成形ではできない形状の自由度、ぶつけたときに凹みにくいといった樹脂ならではの特性もある。
 これまで樹脂の採用に関して欧州メーカーほど積極的でなかった国内完成車メーカーが樹脂製バックドアの採用を始めたのはなぜなのか。しかも車両価格が200万円を下回る普及価格帯の車種で。

第二世代に進化したバックドア
 ラフェスタとR1で採用したバックドアは、どちらも日立化成工業がモジュールとして生産しており、改良を加えた第二世代の製品と同社では位置付けている。同社はこれまで日産自動車の「ステージア」「ムラーノ」「Infiniti FX」にバックドアモジュールを供給しており、これらが第一世代にあたる。車両価格はステージアが261万円から、Infiniti FXは排気量の多い「FX45」で4万5450ドル(約473万円)からと、いずれも高級車種だ。

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図2●日産自動車「ラフェスタ」
バックドアは日立化成工業製で、樹脂外板を採用。これまでバンパなどに使われていたPP(ポリプロピレン)を使う。鋼板製に比べて11%軽くできた。バンパ部分も一体化している。

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図3●富士重工業「R1」
ラフェスタと同じく樹脂バックドアモジュールを採用。ただし、外板は例外的にPPE/PA(ポリフェニレンエーテル/ポリアミド)のノリルGTXを使う。