図1 Intel社のJeffrey Lawrence氏
図1 Intel社のJeffrey Lawrence氏 (画像のクリックで拡大)

 「コピー・ワンスの見直しの後は,リモート視聴などの新しい利用形態を実現する取り組みを進めていくべきだろう」。米Intel Corp.でデジタル・コンテンツの著作権保護関連の取り組みを統括する同社 Director, Global Content PolicyのJeffrey Lawrence氏が来日し,地上デジタル放送の著作権保護に関する見解を示した(図1)。

 Lawrence氏は,録画機に蓄積した番組を外出先から視聴できる「リモートアクセス」(図2)や,放送中の番組を外出先からリアルタイムで視聴できる「IP再送信」(図3)などの新しい利用形態をユーザーが望んでいるとし,それらを実現するための取り組みに関わっていきたいとした。

図2 録画機に蓄積した番組を外出先から視聴する「リモートアクセス」の概念図。外出先からネットワーク経由で録画機にアクセスし,映像をストリーミング再生する
図2 録画機に蓄積した番組を外出先から視聴する「リモートアクセス」の概念図。外出先からネットワーク経由で録画機にアクセスし,映像をストリーミング再生する (画像のクリックで拡大)
図3 放送中の番組を外出先からリアルタイムで視聴する「IP再送信」の概念図。図に示した,サービス・プロバイダーにアクセスしてストリーミング再生する形態と,家庭に設置した受信機にネットワーク経由でアクセスしてストリーミング再生する形態が考えられるとした
図3 放送中の番組を外出先からリアルタイムで視聴する「IP再送信」の概念図。図に示した,サービス・プロバイダーにアクセスしてストリーミング再生する形態と,家庭に設置した受信機にネットワーク経由でアクセスしてストリーミング再生する形態が考えられるとした (画像のクリックで拡大)

 現在,地上アナログ放送ではソニーの「ロケーションフリー」(ロケフリ)製品群や米Sling Media, Inc.の「Slingbox」製品群のように,家庭で受信したテレビ番組を外出先からネットワーク経由で視聴するための製品が存在する。しかし地上デジタル放送の受信機の運用規定(ARIB TR-B14)は,こうした製品の実現が難しいものとなっている。受信機がIPネットワーク経由で映像を出力する場合,出力先を同一サブネット内の機器に限っており,「DTCP-IP」を使って映像ストリームを暗号化する必要がある。さらにDTCP-IPには,通過できるルータの数や通信パケットの往復時間などに制限がある。

「認証+シングルストリーム限定」で例外を

 そこでLawrence氏が提案したのは,DTCP-IPを活用しながらリモート視聴を実現する方法と,サービス・プロバイダー経由で外出先からの視聴を実現する方法である。DTCP-IPを活用する方法は,「『パスワードなどを使った認証が済んだらDTCP-IPのルータ数などの制限を無視する』といったルールを作ることで実現できるのではないか。技術的には簡単だが,ARIBの運用規定を変える必要がある。さらにDTCP-IPの仕様を変える必要があるならば,議論に前向きに関わっていきたい」。このとき,「リモート視聴は1ストリームだけに限定する」といったルールが必要になるだろうとの見解を示した。

 Lawrence氏は2006年12月に来日した際に,国内の地上デジタル放送の「コピー・ワンス」見直しの議論について,「EPNへの変更が最善だが,それが認められないならばARIBの規定を変えるしかない」と説明していた(Tech-On!の関連記事1)。その後,総務省の諮問機関である情報通信審議会が開催する「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」は,録画したコンテンツのコピーを9回まで許可することが適当という結論を出した(日経エレクトロニクス誌の関連記事Tech-On!の関連記事2)。このことについてLawrence氏は,「ユーザーは『自由』を求めるものだ。暗号化によるコンテンツ保護技術の連鎖で自由にコピーを生成できるEPNが最良だったという思いは変わらない。しかし,今回の見直しによって最低限の自由は確保できる状況になったのではないか」とした。

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