分子中にF(フッ素)を含むポリマーの総称である。最も古くから知られているのはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)で,炭素原子の周りすべてをフッ素原子で置換してある。表面エネルギーが小さいので,非粘着性や低摩擦性を持つ。耐熱性については280℃近い使用温度を誇る。耐薬品性にも優れ,フッ酸や硫酸にも耐える。 こうしたユニークな特徴から,化学工業,自動車部品,電線被覆,半導体,衣料など幅広い用途に広がっている。
溶融成形可能なフッ素樹脂も
PTFEは溶融成形できないために,流動性を上げたり,融点を下げて溶融成形可能にしたフッ素樹脂もある。CF3やエーテル基を導入したFEP(テトラフロオロエチレン-ヘキサフロオロプロピレン共重合体)やPFA(テトラフロオロエチレン-パーフロオロアルキルビニルエーテル共重合体),炭化水素系の分子を導入したETFE(テトラフロオロエチレン-エチレン共重合体),PCTFE(ポリクロロトリフロオロエチレン)である。
2006/11/10
旭硝子の高機能フッ素樹脂が
北京五輪の施設に採用
旭硝子は,2008年8月8日から始まる北京五輪のメインスタジアム「国家体育場」の屋根と水泳会場「国家遊泳中心」に,同社のフッ素樹脂(ETFE)フィルムが採用されたと発表した。同フィルムが使用される面積は,国家体育場が約5万m2,国家遊泳中心が約30万m2で,同社は既に供給を開始している。
採用された高機能フッ素樹脂フィルムは,同社が原料から一貫生産している「Fluon
ETFEフィルム」(日本では「アフレックス」)。耐熱性/耐薬品性/電気特性などさまざまな特徴を持つが,今回は特に(1)透明で光を十分に透過する(2)軽いため構造への負担が小さい(3)劣化しにくく寿命が長い(4)曲線的な加工が可能で意匠性に優れる---といった点がポイントになった。
TOTO,セラミックスと樹脂を複合化して
傷や水アカに強いコーティング技術を開発
TOTOは,金属や樹脂の表面を傷や水アカから守る「ハイブリッドコーティング」技術を開発した。同技術は,バインダであるシリカ(SiO2)の中にPTFE粉末を均一に分散させるもの。生成した膜はシリカの硬さとPTFEの滑らかさを併せ持つことで,耐傷付き性が格段に向上する。
図は,原子間力顕微鏡(AFM)で観察したハイブリッドコーティング膜の表面状態で,白く隆起して見える部分がPTFE,それ以外がシリカ。この膜をコーティングしたステンレス鋼とステンレス鋼単体で耐傷付き性を比較したところ,前者の傷の付きにくさは後者の50倍以上と高かった。耐傷付き性がこれほど向上するのは,膜がシリカとPTFEのハイブリッドであるためだ。
バインダのシリカは石英ガラスと同じ成分を持ち,傷付き防止の目的で眼鏡のレンズのハードコートや高速道路の遮音壁表面などに利用されるほど硬い。とはいえ,シリカ単独だと限界がある。陶器のような硬い材料で擦られると傷付いてしまう。それを補完するのが,弾性があり滑りが良いPTFEだ。