日経ものづくり 詳報

傷や水アカに強いコーティング技術
TOTOがセラミックスと樹脂を複合化

適用基材を金属から樹脂に拡大し,将来は積極的に対外展開図る

 TOTOは,金属や樹脂の表面を傷や水アカから守る「ハイブリッドコーティング」技術を開発,このほど特許が登録されたのを機にその詳細を明らかにした。同技術は,バインダであるシリカ(SiO2)の中にPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粉末を均一に分散させるもの。生成した膜はシリカの硬さとPTFEの滑らかさを併せ持つことで,耐傷付き性が格段に向上する。
 図(a)は,原子間力顕微鏡(AFM)で観察したハイブリッドコーティング膜の表面状態で,白く隆起して見える部分がPTFE,それ以外がシリカ。この膜をコーティングしたステンレス鋼とステンレス鋼単体で耐傷付き性を比較したところ,前者の傷の付きにくさは後者の50倍以上と高かった。耐傷付き性がこれほど向上するのは,膜がシリカとPTFEのハイブリッドであるためだ。
 バインダのシリカは石英ガラスと同じ成分を持ち,傷付き防止の目的で眼鏡のレンズのハードコートや高速道路の遮音壁表面などに利用されるほど硬い。とはいえ,シリカ単独だと限界がある。陶器のような硬い材料で擦られると傷付いてしまう。それを補完するのが,弾性があり滑りが良いPTFEだ。「機械部品の摺動部などでは,傷を防ぐために滑りを良くする。この発想を生かした」(同社総合研究所基礎研究部機能材料研究グループグループリーダーの下吹越光秀氏)。

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図●ハイブリッドコーティング膜
(a)表面。原子間力顕微鏡(AFM)で観察した。PTFE(白く見える部分)がシリカ(茶色く見える部分)のバインダの中にほぼ均一に分散している。(b)断面。シリカバインダの上にPTFEが顔を出す。