着々と進化する一眼レフ・カメラ


 ミラーレス・カメラの勢いが増しているとはいえ,レンズ交換式デジタル・カメラ市場では依然として一眼レフ・カメラの販売台数の方が多いのは事実である。そして,一眼レフ・カメラも着々と進化し,新製品が登場している。カメラ・メーカー各社はphotokina 2010に合わせるように中級機を中心に発表した( 日経トレンディネットの関連記事)。中でも注目を集めたのがシグマの「SD1」だ。子会社の米Foveon, Inc.が開発したCMOSセンサを搭載し,「APS-Cサイズの撮像素子で最高画質を目指した」(シグマ 代表取締役社長の山木和人氏, Tech-On! 関連記事13)。SD1は2011年春ごろに出荷を開始する予定という。

photokina 2010でソニーが参考展示した中級機

 このほか,レンズ交換式デジタル・カメラで大きな関心を寄せられたのがソニーの「α55/33」である。これまでにない技術を採用し,ヒットにつなげた( 日経エレクトロニクス2010年12月27日特集記事)。具体的には,従来の一眼レフ・カメラが使うミラー・ボックスの代わりに,「トランスルーセントミラー・テクノロジー」と呼ぶ透過ミラーを搭載した。これによって,10コマ/秒の高速連射と高速な位相差検出方式のオートフォーカス(AF)の両立を実現した。同社は,トランスルーセントミラー・テクノロジーを搭載する,α55の上位機種にあたる製品の開発を進めており,2011年に発売するとみられている。

コンパクト機は多様化へ

富士フイルムの高級コンパクト機「FinePix X100」と,商品企画を担当した河原洋氏(同社 電子映像事業部 商品部 担当課長)

 コンパクト型デジタル・カメラでは,画素競争が終わり,新たな競争軸でしのぎを削る時期に突入した。各社は個性を生かした戦略に舵を切り,製品の開発を始めた。例えば,富士フイルムは,大判の撮像素子を搭載しつつ細部までこだわる高級コンパクト機「FinePix X100」をphotokina 2010で初公開した(FinePix X100の特設サイト)。オリンパスも高級コンパクト機の開発を進めていることが明らかになった。

 カシオ計算機は,“一芸”を極めた機種を開発した。GPSを搭載する“旅カメラ”「EXILIM EX-H20G」と“アート”を前面に打ち出した「EXILIM EX-ZR10」である。搭載する画像処理LSIは新規に開発したもので,演算性能を高めたほか,リコンフィギュラブル技術を採用している。機能があっという間に陳腐化してしまうコンパクト・カメラの,開発期間の短縮を図る狙いがある。

カシオ計算機の「EXILIM EX-ZR10」は,1回のシャッター操作で露出の異なる複数枚の画像を高速連射して合成することで,独特な写真を撮影できる

 一つの機能に特化したカメラは他にもある。富士フイルムは2010年8月に3次元(3D)で静止画や動画を撮影できるデジタル・カメラ「FinePix REAL 3D W3」を発表した( Tech-On! 関連記事14)。2009年8月に発売した3Dカメラ「FinePix REAL 3D W1」の後継機で,価格を約1万円下げた。3D撮影への対応は,ミラーレス・カメラでもパナソニックが実施した( Tech-On! 関連記事15)。3Dテレビなどの視聴環境が整えば,3Dカメラが各社から投入される可能性はある( Tech-On! 関連記事16 同17)。

 3D以上に,2011年注目したいのはインターネットとの連携機能だ。暗所での撮影で力を発揮する裏面照射型CMOSセンサの普及などによって撮影機能は向上しており,「どんなカメラでもきれいに撮影できる」(複数のカメラ・メーカーの技術者)レベルに達している。一方で撮影後についてはまだまだ工夫の余地は多く残されており,その際カメラ本体からデータを取り出す手段がカギを握る。すでにさまざまな方法が検討されており,例えば無線LAN機能付きSDメモリーカードでは,米国のベンチャー企業のEye-Fi社が開発した「Eye-Fiカード」のほか,東芝が普及促進団体を設立する動きを見せた( Tech-On! 関連記事18 同19 同20)。このほか,家庭内ネットワーク規格のDLNAや,WiMAXに対応する選択肢もある。インターネットと連携できれば,Androidを搭載してアプリケーション・ソフトウエアを動作させ,ユーザーの好みに合わせて機能を追加するといったデジタル・カメラの新しい姿も現実味を帯びる( Tech-On! 関連記事21)。

 このように,2011年もデジタル・カメラの激しい開発競争は続きそうだ。例年2月に開催されていたPMAが,2011年は9月に開催時期を変更したため,まずはCESと2011年2月の「CP+2011」(2011年2月9~12日,パシフィコ横浜)に期待したい(CP+2011のホームページ)。