--経済産業省と文化庁の合意でBlu-ray Discへの補償金制度適用が決まったこと(Tech-On!関連記事3)は合意と関係するのか

椎名氏 関係ない。Blu-ray課金自体は喜ばしいし歓迎するが,それと今回の決断とは関係ない。Blu-ray課金についての考えは先日出した声明(Tech-On!関連記事4)の通りだし,それは本日の会議でも申し上げた。

 今回の譲歩はあくまでデジコン委の議論の中で,我々が決めたこと。権利者としてはデジコン委に対する責任を果たしたと思っている。対価の還元と補償金の関係を切り離せば,僕らは自由になれる。我々が少し考え方を変えることでダビング10が実施できるならそうしようと考えた。「対価の還元」は情報通信審議会の答申という形で残っているから,今後,情通審が考えてくれるかも知れない。今は実現していないけど今後の可能性はまだある。

--5月8日に文化庁が提案した「調整案」でも権利者は譲歩したと主張していたはず(Tech-On!関連記事5)。今回も続けての譲歩になる。

椎名氏 同じ種類の譲歩とは思っていない。著作権の問題で譲歩するのとは全然違う。デジコン委では僕は,なるべく現実的に話を進めたいと思っている。我々がメーカーに言い続けていたのは「権利者の利益を尊重してください,ただ食いは止めてください」ということ。ただ,それは自社の利益を最大化するという企業の論理とぶつかる。そうなったときに妥協していかなければ接点は見つからないと思っている。

--文化審議会における補償金制度の議論は今後どうなると考えているか。

椎名氏 これで一つかたがついたので改めて話をできると良いと思っている。今回の対立でメーカーさんの主張は2年前に戻っちゃった。彼らが今後も話し合いのテーブルに着かないのなら僕らも2年前に戻らざるを得ない。まだそういう最悪の状況にはなっていないと思っている。

 今回の決断を戦略的にやった訳じゃないから,今後どういう影響を及ぼすかは分からない。良い影響があればいいと願っている。これが人質だったとするなら,メーカーさんはもう締め切りが無くなったことになる。「しめしめ」と言って出てこないと困るけどね(笑)。話し合いのテーブルに着いてほしいと思う。補償金制度はきちっとした議論をして,お互い納得した上で制度を作っていくべきです。こうなれば何年でも議論に付き合いますよ。

--民間同士の話し合いで解決する考えはないのか。

 世界企業のメーカーさんに比べたら僕らは圧倒的に弱い立場。民間同士の話し合いで決めようとしても,テーブルについたと思ったら「忍術で消えた」なんてことも起こりかねない。やはり制度で守ってもらいたいという考えはある。

--劇的な発言だった。世論を味方に付けることを狙ったのか。

 そんなことないよ。発言するときは本当に緊張した。副次的な効果として世論のこともチラッと頭をかすめたが,それを狙って今回の譲歩を決めたわけではない。