経済産業省と文化庁はBlu-ray Discレコーダーを私的録音録画補償金制度の対象機器に加えることで合意した。2008年6月17日の閣議後に行われた定例記者会見で,経済産業大臣の甘利明氏と文部科学大臣の渡海紀三朗氏がそれぞれ明らかにした。

 文化庁長官官房著作権課は今回の決定について,「ダビング10実施のための環境作りの一環として現行法の枠内で行った。私的録音録画補償金制度の抜本的な改正については,(文化審議会傘下の)『私的録音録画小委員会(録録小委)』で引き続き議論する」と説明する。現行の著作権法では,補償金制度の対象機器の指定は政令によって行われるため,閣議決定によって実施できる。

 「ダビング10」は,地デジ対応録画機に対する新しい著作権保護ルールである。総務省 情報通信審議会傘下の「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジコン委)」が2007年8月に公表したいわゆる「第4次中間答申」で,現行のルール「コピーワンス」を緩和する目的で導入が決まった。2008年6月2日からの運用開始を予定していたが,デジコン委で実施を合意できなかったため,運用開始は現在,延期されており,開始のめどが立っていない状況にある。

 ダビング10の実施が合意できなかったのは,第4次中間答申に示された「クリエーターが適正な対価を得られる環境の実現」を巡って,ダビング10対応機器への私的録音録画補償金制度の適用を求める権利者と,それに反対する家電メーカーが対立したためである。今回の経産省と文化庁の決定は,現行法の枠内で「クリエーターが適正な対価を得られる環境の実現」を満たす条件を整える目的があると見られる。

 家電メーカーの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)は,今回の決定について「関係省庁間の調整に感謝する。引き続きダビング10の早期実施に向け努力したい」(JEITA広報)とする。

 一方,デジコン委や録録小委で権利者側の委員を務める実演家著作隣接権センター(CPRA)の椎名和夫氏は本誌の取材に対し,「今回の措置がデジタル放送に着目したものか明らかでなく,今後,補償金制度の枠組みがどうなるか明確でない。本来,Blu-ray Discレコーダーはとうの昔に録画補償金の対象になってしかるべき機器」とし,今回の決定がダビング10実施に直接つながる可能性を否定する見解を示した。

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