LSIやボード設計者が仕事に必要な技術・手法,そして産業・企業動向の最新情報をお届けするテーマサイト「EDA Online」では,技術そのものを紹介した記事がよく読まれた。2006年(Tech-On!関連記事1)までは開発戦略や産業寄りの記事がよく読まれていた。この意味では大きな転機と言える。

▼ 2007年「EDA Online」記事ランキング

順位記事タイトル日付
1NECエレ,1チップ・ケータイSoC「M2」を発表し,低電力化技術を披露07/04
2「品質はタダではない」,JEITAが半導体加速試験のガイドラインを改訂02/26
3「2007年度のLSI事業黒字化がミッション」,富士通が電子デバイス事業戦略説明会04/04
4車載マイコンはこうあるべき,デンソーのLSI開発者が語る09/19
5【EDSF 2007】SystemVerilog利用の機能検証が本格化,効果の定量化に感銘02/04
6論理LSI上で複数の不良が発生しても自己修復可能な技術,NECらが開発02/19
7「ケータイよりも断然伸びる!」,日本TIが自動車向け半導体事業で戦略説明会08/30
8「ここでも選択と集中」,NECエレが55nm世代のセルベースLSIで戦略変更01/18
9ルネサスの営業利益が2倍弱に増加,マイコンとSoCがけん引05/10
10東芝,Cell BEのSPEを搭載の新・画像処理プロセサを発表09/20
11「高品質は生き残るための条件」,自動車用半導体でルネサスに聞く02/23
12「LSI設計者が増えない時代。日立との包括契約の意味」,Cadence社長が日本で語る04/16
13Vista不振で,WSTSが半導体市場予測を下方修正,2007年は+2.3%に留まる05/30
14【EDSF 2007】「実チップへの適用が拡大中」,ソニーが動作合成の活用状況と課題を示す01/29
151月の半導体世界売上高が前年比9.2%増,DRAMは驚異の72%増03/05
16【EDSF 2007】「FPGAキラー」を味方に付けた日本アルテラ,その成果を披露01/29
17LSIテスター大手決算,5社全社が前年比で減収03/15
18ルネサスがSSTAフローを公開,2007年度後半に65nmチップから適用07/15
19「一気通貫で低電力設計を支援」,富士通がCPF対応のLSI設計環境を構築07/05
20【CEATEC】東芝のCell応用SoCと新SoCプラットフォームを「見た!」10/05

(集計期間:2007年1月1日~12月16日)

 2007年の首位は,NECエレクトロニクスの携帯電話機向け1チップ(ベースバンド処理+アプリケーション処理)SoC「M2」の記事だった。この記事ではM2向けの低電力化技術のポイントを紹介した(Tech-On!関連記事2)。同社によれば主な技術は,「クロック自動制御」,「並列処理化」,「マルチVthトランジスタ」,「電源遮断」,「基板バイアス制御」である。いずれも基本技術としては一般的だが,実装の細部やEDAツールの利用といった点でNECエレ独自の工夫やこだわりがあった。

前世代品となるM1(左)とM2(右)
前世代品となるM1(左)とM2(右) (画像のクリックで拡大)

 2位は,半導体の信頼性保証試験のガイドラインの改訂を紹介した記事である(Tech-On!関連記事3)。試験を沢山行えば信頼性は上がるが,それにかかるコストも上がる。最適なポイントはどこかを,半導体メーカーとユーザーが検討するための指針を示すことが,この改訂の狙いである。これまでの建前論から,実践的なガイドラインへの脱皮を図る。

 このほかにも技術の記事としては,4位に車載マイコンのあるべき姿,5位にSystemVerilogの利用技術,6位にLSIの自己修復回路技術がベスト10に入った。

自動車が二つ目のキーワード

 「技術そのもの」に次いだ2007年のキーワードは「自動車」と言える。上述した4位の車載マイコンに加えて,7位に日本テキサス・インスツルメンツの自動車向け事業の戦略,11位にルネサス テクノロジの自動車向け半導体の信頼性戦略が入った。自動車の国内販売は不振だが,自動車の電子化,台数ベースの世界市場の拡大などにより,半導体メーカーの自動車分野への期待は高い。

 一方,昨年まで上位を占めていたジェネラルな開発戦略や産業関連の記事では,2007年は富士通の電子デバイス事業戦略の3位が最高だった(Tech-On!関連記事4)。このほか,上述した7位の日本TIの戦略に続き,8位にはNECエレのセルベースLSIの戦略展開の記事が入った。ずっと人気の高かった「Cell」は,2007年は10位が最高だった。時代の変化を象徴した。