LSIやボード設計者が仕事に必要な技術・手法,そして産業・企業動向の最新情報をお届けするテーマサイト「EDA Online」では,開発戦略とC言語設計に関係する記事がよく読まれた。かつては「無策」とまで言われたこともあった日本企業だが,最近は,報道機関向けにも積極的に戦略を語るように変化している。新製品発表会の場でも,新製品そのものよりも,戦略や目標を語る時間が長くなってきた。

 それは顧客の要求が変わってきているからだ。顧客が低コストやハイ・スペックを要求することには変わりはないが,それだけではモノが売れなくなっている。目前の製品の開発コストが多少安価だったとしても,次世代品,次々世代製品開発のときに,時の経過に相当した進化を達成しそうな部品やツールでなければ,買ってもらえない。ロードマップや戦略が重要な理由がここにある。

▼ 2006年「EDA Online」記事ランキング

順位記事タイトル日付
1「日本製LSIは高画質化回路の候補にならず」,東芝のHD DVDレコーダ発表会から6月22日
2「過去に儲からなかったのには理由がある」,富士通の小野氏が半導体戦略を語る2月7日
3【ASP-DAC 2006】キヤノンが勝ち組になった理由を基調講演IIIに見た1月28日
4「デカイ・・・。LSIメーカーにチャンスか」,東芝のHD DVDプレーヤ発表会に参戦3月31日
5UniPhierの第2章が始まった,松下とスクウェア・エニックス提携のインパクト4月7日
6「日本一から世界一へ」,ルネサスが自動車事業説明会で気勢を上げる12月14日
7【CEATEC】メッセで見かけたSoC達,「出席率」は今一歩10月4日
8「平均的な技術者集団」が世界で勝つ,キヤノンのプラットフォーム戦略5月23日
9松下の一眼レフ・デジカメに搭載の新SoC「ヴィーナスエンジンIII」は65nmで製造6月21日
10ルネサス,2048個の演算器を搭載するSIMD型プロセサ・コアを開発2月15日
11「C言語設計技術の進歩がSoCの大規模化に追いつかない」,ソニーが講演5月19日
12【ASP-DAC2006】地道な努力を積重ね,CellのSPUの実機バグは1件だけ2月1日
13「これなら実チップに使える」,東芝がリコンフィギュラブル・プロセサ・コアを評価4月21日
14任天堂のWii,NECエレのDRAM混載SoCを採用5月10日
15NECの動作合成,ようやく市場へ出る6月28日
16「中国での設計を2~3年後に3~4割に増やす」,ルネサスがマイコン戦略を語る7月5日
17大規模SoCをまるごとC言語シミュレーション,UniPhierの開発環境に新たな武器5月24日
18「10年後にクロックをたたけているか」,NECエレがMentorのEDAで信頼性をチェック9月5日
19「PS2での実績を武器に世界進出を狙う」,先端ASICに特化したファブレスに聞く4月19日
20「こんなに使っています」,NECエレがC言語入力動作合成の成果を披露12月3日

(集計期間:2006年1月1日~12月26日)

 EDA Onlineの2006年の記事ランキングでは,2位の富士通の半導体事業戦略や,3位と8位に入ったキヤノンのLSI開発戦略,6位のルネサス テクノロジーの自動車用半導体事業戦略などが戦略関係記事の代表例である。2005年から1段飛躍したのが,松下電器産業のLSI開発戦略の「UniPhier」である。5位の記事のように,UniPhierは松下自身の開発戦略の枠を超え,異業種との協業の開発戦略へと進化した。

 技術関係では,C言語設計に関係した記事が上位にランクされた。15位の記事のように,満を持して(ようやく?)市販されたNECのC言語動作合成ツールがこの分野のけん引役になっている。このほかで目を引くのは,18位のNECエレクトロニクスの信頼性シミュレータである。通常動作の設計検証に使う回路シミュレータのモデルを工夫して,10年後の回路動作をコンピュータ上で見せる。例えば,出荷当初300MHzで動作していた回路が,10年後にはトランジスタの劣化でその周波数で動作しないことが確認できる。

 DFM関係では,富士通が自社開発したSSTAをマイクロプロセサ開発に適用した事例が21位で入った(Tech-On!関連記事)。