図1 シールをはがしてネジを探す
図1 シールをはがしてネジを探す
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図2 HDR-UX1を構成する2枚の基板のうち,画像処理を行っている方の基板。H.264のエンコーダLSIやアプリケーション・プロセサLSIなどを実装する。
図2 HDR-UX1を構成する2枚の基板のうち,画像処理を行っている方の基板。H.264のエンコーダLSIやアプリケーション・プロセサLSIなどを実装する。
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図3 CMOSセンサやH.264のエンコーダLSIなどの付近に放熱板を使用している。
図3 CMOSセンサやH.264のエンコーダLSIなどの付近に放熱板を使用している。
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 ソニーのAVCHD対応のデジタル・ビデオ・カメラ「HDR-UX1」の販売が,予定されていた2006年9月10日よりも早く始まった。東京都内の家電量販店などでは既に店頭に並んでいる。業界初のH.264/MPEG-4 AVC(H.264)方式で1080iのHDTV映像を符号化できる製品である。早速,編集部ではHDR-UX1を購入し,分解した。

 分解に協力してくれたのはデジタル・カメラの開発に携わっている二人の技術者。挨拶もそこそこに二人は手際よくネジを外していく。5~6個のネジを外したところで,筐体をはがそうと試みるとうまくいかない。どこか,まだネジが止まっているようだ。筐体に張ってあるシールやゴム状の突起物をはがして隠れネジを探すなど格闘すること30分(図1),ようやく筐体を解体すると中から2枚の基板が顔をのぞかせた。

 「おぉ・・・。真っ黒だなぁ」。技術者がこう嘆息するのも無理はない。2枚の基板にはソニーが自社開発したH.264のエンコーダLSIやアプリケーション・プロセサ,韓国Samsung Electronics社の128MビットのモバイルDRAM「K4M28163LH」,米Texas Instruments社製と思われるアナログ・フロントエンドLSI「VSP2435」,米Silicon Image社のHDMIの受信LSI「Sil9030CTU」などがびっしりと実装されていた。受動部品の点数も多い(図2)。

 ざっと見て気になった点は二つ。一つは放熱板を多用している点,もう一つはフレキシブル基板をふんだんに使っている点である(図3)。放熱板はH.264エンコーダLSIとアプリケーション・プロセサ,CMOSセンサに接触するように取り付けられていた。コーデックLSIの消費電力が約500mW,機器全体での録画時の消費電力が約5.0Wであることから放熱対策は必須だったと思われる。LSIで発生した熱は放熱板を介して,筐体に逃がす形となっていた。

 驚いたのはCMOSセンサの裏側にも放熱板を取り付けてあったことだ。「CMOSセンサはCCDに比べて消費電力が小さい。本来なら放熱板は要らないはず。なぜCMOSセンサの裏側に放熱板を取り付けたのかちょっと理由が分からない」と技術者は指摘した。

 フレキシブル基板はこれでもかというほど多用されていた。今回の製品は「部品にかなりコストを費やしている」という印象が強い。ここでも注目はCMOSセンサだった。メイン基板との接続に細線同軸ケーブルを使用している。不要輻射雑音を抑えるために使ったと思われる。ただし,取り付け個所はフレキシブル基板でも接続できるように見える。不要輻射雑音を抑えるためであれば,フレキシブル基板に雑音抑制シートを張っても対応できそうだ。

 細かいところを見ていくと,はんだボールが残っていたり,フレキシブル基板の所々に雑音抑制シートが張ってあったりと実装面での粗さが目立った。実装面のブラッシュ・アップはこれからと思われる。なお,分解結果の詳細は今後日経エレクトロニクス誌で報道する予定である。