宇宙政策に夢を

 もう一つ、宇宙基本計画に必要なものがある。それは「宇宙に対する夢」を提供することだ。この点についても、一定の配慮はあるものの現状ではまだ不十分で,さらなる充実を働きかけたい。

 2008年3月に、Tech-On!で「月面に2足歩行ロボットを」という個人的な思いについて書かせていただいた。それを読んでというわけではないだろうが、2009年6月に策定された宇宙基本計画では、「有人やロボットを活用した宇宙活動の推進により、人類の活動領域を拡大することを目指すこととし、長期的にロボットと有人の連携を視野に入れた、平成32年(2020年)頃のロボット技術をいかした月探査の実現を目指した検討を進める』との方針が盛り込まれた。

 宇宙で太陽エネルギーを使って発電し、地上に送って電力利用する「宇宙太陽光発電」(古いですが、「未来少年コナン」に登場していましたね)についても、「人類が直面している世界的な環境問題やエネルギー問題などの解決の可能性を秘めた宇宙太陽光発電については、米国等との情報交換を進めながら、宇宙太陽光発電の実現に必要な研究を実施してきている。必要な個々の技術の原理確認が進められており、今後、安全性や経済性の確保も含めた実現に向けて、段階的な実証を行っていくことが重要である」との表現で触れられていた。個人的にはこの宇宙太陽光発電も、ぜひ検討を進める事項だと思っている。

さらに政府が取り組むべきこと

 これらの戦略を実行に移す上で,宇宙行政を実行する組織の整備も重要だ。これまで筆者は,産業育成を見据えた宇宙政策の重要性や,その実行を担うJAXAを文部省が管轄していることの弊害などを,再三主張してきた(関連記事(1)(2)(3)(4)(5))。宇宙基本法の成立や宇宙基本計画の策定で,宇宙政策を産業振興につなげる道筋は見えてきた。ただし,JAXAを含めた行政組織の課題は,現状では解決されていない。

 今年1月12日、平成22年度予算(政府原案)における宇宙関係予算についての速報値が発表された。

 宇宙太陽光発電についての予算は文科省・経産省の2省にまたがっているし、宇宙基本計画の策定や推進を担う宇宙開発戦略本部に係る経費は、内閣府予算ではなく内閣官房予算に変更されている。さまざまな調整の結果こうなったものであり、次善の策であるとお許しいただきたいのが正直なところだ。ただし、私が提唱している「宇宙局による宇宙行政の一元管理」とはほど遠い結果になっていると言わざるをえない。