2007年6月、第166回国会で与党(自民党+公明党)が議員立法「宇宙基本法」を衆議院に提出しました。その審議は参議院選、安倍総理の辞任などがあり止まっていましたが、いよいよこの通常国会で動き出します。

 本法案は、わが国の宇宙開発に関する総合的な政策を定めたもので全35条。狙いは、ミサイル防衛などの目的でロケット技術の利用を進めることで、そのほか、ロケット打ち上げビジネスの振興や宇宙政策の一元化を行う宇宙戦略本部を設置することなども盛り込まれています。

 ここで一つ、大きな議論になるのが「宇宙の平和利用原則」の解釈でしょう。この原則は1969年に宇宙開発事業団(NASDA)法成立の時に衆参両院で議決された「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」によるもので、「宇宙開発を平和目的の利用に限り」としています。この「平和目的」は「非軍事」と解釈されてきたので、情報収集衛星を打ち上げる際にもその是非が議論を呼びました。

 この解釈を続け、「宇宙利用のミサイル防衛はできない」とするか、それとも「防衛は非侵略行為だから可能にしよう」とするかという議論が、これを機に盛り上がることでしょう。それは大事なことです。けれど私は、それにも負けないくらい「宇宙開発という事業をどうイノベーションに結び付けるか」という議論が重要なのだと考えています。宇宙基本法の議論の中で、この点を主張していくつもりです。

 ちなみに私は「専守防衛」の範囲でミサイル防衛は対応できると考えます。ただ、どこまで許容するかは、コストや技術の問題があるので、かなり深く議論する必要があるでしょう。

月面に2足歩行ロボットを

 基本に戻って、宇宙政策とは何かを改めて考えてみましょう。私は、この政策には三つの観点が必要なのだと考えます。

  1. (1)天文学、宇宙物理学など科学の推進
  2. (2)宇宙技術のスピンオフによるイノベーションの推進
  3. (3)納税者に対する夢の提供
 ここでは議論をしませんが安全保障の問題がこれに加わります。

月面に二足歩行ロボットを このうち科学の重要性については、個人的には、理解しているつもりです。けれど、一般の方はどうでしょうか。もっと成果を納税者に理解してもらうようにしなければならないと感じます。そのことが、「夢の提供」にもつながっていくのですから。この「夢」ということに関していえば、もっとわかりやすい、インパクトのある目標を掲げる必要があるのではないでしょうか。たとえば、「月面に2足歩行ロボットを歩かせる」というプロジェクトなどどうでしょう。わが国が得意とするロボット技術を世界にアピールするという点でも、かなり大きなインパクトがあるではと思うのです。