コストを抑えるべくJ-クレジットを自社で購入
そして、この当時、最もコストを抑えて再エネ電力に切り替えることができる方法として、再エネによる環境価値を取引するための証書の1種である「J- クレジット」と通常の電力を組み合わせることにしました。さらに、協議中の電力会社から電力とJ- クレジットをセットで買った場合、J- クレジット取得に関する手数料がJ 社の想定より割高になることが分かりました。
この電力会社は、かねてJ- クレジットとのセット販売にあまり積極的ではありませんでした。「手間がかかる再エネ電力メニューは、できれば販売したくない」という電力会社の思惑から、クレジットの販売手数料の設定が高めになっているようでした。
少し調べてみると、J- クレジットを自社で調達できることが分かりました。しかも、電力会社の提示額の半額で買えることが分かったのです。
そこで、通常の電力は電力会社から調達し、年間の使用電力量(kWh)に相当するJ- クレジットを自社で取得して、再エネ電力への切り替えを進めることにしました。
最終的に年間電気料金を約5%下げられたうえ、グローバル本社からの指示もクリアできる再エネ100%の電力調達を実現したのです。
ユーザー企業自ら汗をかいたことが奏功
見積もり依頼後の仕様変更は、電力会社の心証を悪くしかねず、コスト削減に悪影響を及ぼしかねません。実際、J 社が見積もりの仕様変更を申し出たときには、不穏な空気が流れたといいます。
しかし、グローバル本社から突如舞い降りてきた意向であることをきちんと説明したこと、さらに顧客として電力会社に依存するのではなく、再エネ導入やコスト削減という目標の達成に向けてJ 社自らも汗をかいたことが良い結果をもたらしました。
「 再エネというものがよく分からない中で取り組んだけれども、電力会社のサポートもあってグローバル本社のリクエストに応えることができました。1年間やってみて、業務上の手間もそこまで大きくないと分かったので、2 年目以降もJ- クレジットによる再エネ化を継続する」と、調達担当者は胸を張ります。
「グローバル本社からの宿題を一緒に考えてくれた電力会社とは、中長期でいいお付き合いをしていきたい」と信頼感も高まった様子です。
本社や親会社の意向にどう応えるか、環境問題にどう立ち向かうかといった大きな目標に、ユーザー企業と電力会社が共に取り組むことで良質なパートナーシップを築くことができるのです。