世界各地で再生可能エネルギーの余剰電力を使ったP2G(Power to Gas)の事業化機運が高まっている。再エネ価格の低下などと呼応し、2023年から徐々に事業化が始まり、2030年以降に本格商用期を迎えるという見方が強まってきた。
 ここでは、日経BP 総合研究所が発刊した最新レポート「世界水素ビジネス 全体動向編」から、P2Gの最新ビジネスモデルの一部を紹介する。

世界最大のP2Gプロジェクトがサウジアラビアで計画

 2020年7月7日、P2Gビジネスの将来を見通す上で、重要な発表があった。世界最大となる4GWの再エネ電源を使った「P2G」プロジェクトの建設・運営に関する契約の締結だ(「世界最大4GWのP2Gプロジェクト、再エネ由来アンモニアを製造」参照)。近年、注目を集めているP2G(Power to Gas)とは、再エネによる電力で水を電気分解して水素を取り出すことをいう。

 契約を締結したのは、米国の大手産業ガス事業者であるAir Products、サウジアラビアのエネルギー事業者であるACWA Power、サウジアラビアの政府系都市開発企業のNEOMの3社。場所は、サウジアラビア北西部のスマートシティ「NEOM」のサイトだ(図1)。

図1●スマートシティ「NEOM」の建設が予定されている紅海沿岸の様子
図1●スマートシティ「NEOM」の建設が予定されている紅海沿岸の様子
エジプト、ヨルダンと隣接し、アジア、ヨーロッパ、アフリカの結節点にあたる地の利を生かす(出所:NEOM)

 ACWA Powerが同サイトで建設を進めている太陽光発電や風力発電といった再エネからの電力を使って、水電解装置でCO2フリー水素を1日あたり650t生産する。これを基に、年間120万tの再エネ由来の「グリーンアンモニア」を製造する。プラントは2025年に稼働予定で、世界各地にグリーンアンモニアを輸出する計画である。

図2●アルカリ型電解装置のイラスト
図2●アルカリ型電解装置のイラスト
10MWモジュールを2つ並べ、ガスや液体を収めるタンクの上に電解槽が並び、ポンプや熱交換器、フィルターなどが組み合わされている(出所:thyssenkrupp Uhde Chlorine Engineers)

 同プロジェクトの中核技術である水電解装置を受注したのが、独thyssenkrupp Uhde Chlorine Engineersである。同社が開発・製造するアルカリ型水電解装置は、1モジュール10MWでモジュールを連結することで大型化しやすく、今回の4GWクラスにも対応できるとする(図2)。

 アンモニア製造に必要な窒素については、Air Productsが開発したASU(Air Separation Units)設備を導入して、空気から分離する。水素と窒素からアンモニアを製造する設備には、デンマークHaldor Topsoeの技術を使うとしている。

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