外国人旅行者が日本にやってくる、いわゆる"インバウンド"の拡大がさまざまなメディアで取り上げられている。銀座や浅草のメインストリートには外国人旅行者向けの観光バスが駐車し、渋滞を引き起こしているという。インバウンドの中でも数が多いのが、爆買いで名をとどろかせている中国からの観光者である。

 日経テクノロジーオンラインの電子デバイス系サイトの記事アクセスランキングにもインバウンドの波が押し寄せた。「半導体デバイス」「半導体製造」「EDA・ソフトウエア」「アナログ」「電子部品」「デバイス」というテーマサイトで公開した全記事のうち、2015年1月1日~11月30日にアクセス数が多かった上位20の記事を右表にまとめたところ、中国関連の記事が目を引いた。

 アクセス数でトップになった記事は「中国マジ半端ないと思った話 Part II」である。副編集長の田中直樹が、中国の電子部品や電子機器の専門展示会を取材した際に出くわした、日本ではあまりお目にかかれない場面を紹介した。無料の展示会なのに、ダフ屋が入場券を売っている。古紙回収での換金(ちり紙交換)を狙って、カタログを集める男性。展示会参加者向け食堂で昼食をとる、参加者には見えない親子。公道で走れない電気自動車を買った人が、大儲けした話などを紹介した記事である。

 3位には、中国Xiaomi社(シャオミ=小米科技)のスマートフォンを分解した記事が入った。Xiaomiは創業からわずか5年で世界第3位のスマートフォンメーカーになった。分解を担当したフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの柏尾 南壮氏によれば、Xiaomi社の成功の秘訣は、すでに成功している企業の模倣だという。ビジネスモデルにとどまらず、製品のコンセプトやデザインまでが模倣の対象になっている。

 ただし、同氏は他の中国製スマホとXiaomi製品の違いも指摘する。「中国製スマホは一般に、基板上に占める通信ブロックの面積が異常に狭く、そこに中国ローカルメーカーの“中華電子部品”がひしめいている。しかしXiaomiのMi 4はそうではない。世界で広く発売されているハイエンドスマホと同じように、世界的に名の通ったメーカーの電子部品を使用しており、その内部構造は極めて普通である」(同氏)。

 中国以外では、米Apple社関連の記事が多数、上位にランク入りした。例えば、2位は「iPhone 6s」と「iPhone 6s Plus」の分解記事である。「Apple Watch」の記事は、9位11位12位15位に入った。

 記事ランキングのインバウンド化の背景には、日本の電子産業が元気を失っていることがあるだろう。その原因を分析した記事「逆転した日本と米国のポジション」が4位になった。同記事の著者の前川 耕司氏(米PDF Solutions社)によれば、米国が地道にIT化に取り組んできたことなどによって、日本が米国の後塵を拝するようになったという。

タクシーアプリで呼んだTesla社のModel S
タクシーアプリで呼んだTesla社のModel S
「中国マジ半端ないと思った話 Part II」より