2014年のノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏。同氏は今、何に注目しているのか。またどのようにして高輝度青色LEDを実用化したのか。中村氏に緊急寄稿してもらった。前・後編、2回に分けてお届けする。(日経テクノロジーオンライン)

 講演や取材などで申し上げていますが、現在半導体レーザーを用いた照明の研究開発に力を入れています。青色LEDと蛍光体を組み合わせた一般的な白色LEDに比べて、高輝度かつ高効率な照明を実現できるからです。

 青色LEDには「droop(ドループ)」という問題があり、高輝度になるほど効率を高めにくい。droopは、発光強度を高めるために駆動電流の密度を上げると、発光効率が低下してくる現象です。これに対して、半導体レーザーであればLEDに比べて1000倍近い電流密度にしても、発光効率への影響はほとんどありません。一度発振してしまえば、理論的には効率を100%近くにできます。

 半導体レーザーと聞くと、「青色LEDよりも高いのではないか」と思われるかもしれません。確かに現状では、半導体レーザーの方が高価です。青色半導体レーザーを用いた白色光源は、既に自動車に採用されていますが、高級車にとどまります(図1)。例えば、ドイツBMW社のプラグインハイブリッド車「i8」のヘッドランプに採用されています。

図1 レーザーヘッドランプの例。ドイツOSRAM Opto Semiconductors社がElectronica 2014に展示したもの。(写真は日経エレクトロニクス撮影)