電気自動車(EV)の難点の一つとされていたのが、充電1回当たりの航続距離の短さです。実際、米Tesla Motors社の「モデルS」など1000万円級の超高級EVでは、高価な電池を大量に搭載することで航続距離で500km超を達成していましたが、それより価格帯の低いEVでは300km未満が一般的でした。しかし、最近の状況を見てみると、どうやら超高級車以外のEVでも400km超の時代が近づいてきているようです。

 それを端的に表していたのが、2016年9月下旬に開催された「パリモーターショー2016」です。日経テクノロジーオンラインのテーマサイト「クルマ」でも、そのショーで公開・発表された次期EVやコンセプトEVを数多く紹介しています。

欧州勢がEV開発を加速

 その一つが、2016年9月5日~10月5日のアクセスランキングで17位にランキングされた「Renault社、400km走れるEV『ZOE』を2016年内に発売」という記事です。航続距離で400kmというのは、部分改良を経て先ごろ日本でも発売になったドイツBMW社の新型EV「i3」と同じくらいです(ただし、ZOEはNEDCモードの場合。i3は正確にはJC08モードの場合で約390km)。そして興味深いのは、両車とも部分改良前の従来車と比べて、電池容量を増大しているにもかかわらず、電池の体積は同等という点です。

 具体的には、ZOEは22kWhから41kWhへ、i3は22kWhから33kWhへとそれぞれ電池容量を増やしています。これは、裏を返すと、電池の進化が航続距離の延長を支えているということです。いずれも電池は韓国メーカーから調達しています。ちなみに、価格は新型i3は499万円から。ZOEの価格は不明ですが、部分改良前の従来車では電池のリース料を除いて200万円台という値付けでした。

 そして、EVのさらなる進化を期待させたのが、ドイツVW社のコンセプトEV「I.D.」です(今回のアクセスランキング12位の「VWが2020年投入のEV、600km走れて『ゴルフ』並み価格」参照)。同記事によれば、同社は「(1回の充電で)600kmまで走れて毎日の足として使える電気自動車(EV)」を「ゴルフのディーゼル仕様車と同等の価格帯で、2020年に発売する」としています。