衝突シミュレーションの完成度を目指す---ホンダでEMCシミュレーションの整備に努めているエンジニアが講演で語った。この講演は、「ANSYS Electronics Simulation Expo」(2016年9月7日に東京で開催)で行われた。

講演する福井 努氏(右端) 日経エレクトロニクスが撮影。
講演する福井 努氏(右端) 日経エレクトロニクスが撮影。
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図1●衝突シミュレーション用モデルをさまざまな解析に展開 ホンダのスライド。
図1●衝突シミュレーション用モデルをさまざまな解析に展開 ホンダのスライド。
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図2●実際の動画のような高精細なシミュレーション結果 ホンダのスライド。
図2●実際の動画のような高精細なシミュレーション結果 ホンダのスライド。
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 登壇したのは、本田技術研究所の福井 努氏(4輪R&Dセンター 第8技術開発室第1ブロック 主任研究員)である(写真)。ホンダでは、3D-CADツール「CATIA」で作った車両モデルを多角形近似して衝突シミュレーションモデルにし、さらにそのシミュレーションモデルをさまざまなシミュレーションに展開する体制を敷いている。展開先の1つが、EMC(電磁界)シミュレーションである(図1)。

 今回の講演で福井氏が、EMCシミュレーションが目指す姿として見せた衝突シミュレーションの完成度は高かった。実際の車を使った衝突実験と、衝突シミュレーションはほぼ同じ結果である。さらに最近は衝突シミュレーションの画像が高解像度化し、例えば光の反射や影なども考慮されているようで、実際の車を撮った動画と見まごうほどだった(図2)。解析精度が高い上に見栄えが良く、「実験を不要にしよう、という衝突シミュレーションのエンジニアの意気込みを感じさせる」(福井氏)。

 同氏らは、EMCシミュレーションが、衝突シミュレーションと同等の完成度になるように日々努力を重ねてはいるものの、その道のりは平坦ではないようだ。例えば、最近はほとんどの新機能がエレクトロニクスで実現されているとはいえ、EMCに明るいエンジニアが自動車メーカーにはそれほどいるわけではない。出荷間際に、EMCの基準をクリアできないで困った果てに、同氏らに回避策(雑音対策部品の総挿入場所など)を求めて駆け込んで来る例があるとのことだった。シミュレーションがうんぬんの前に電磁雑音が発生する仕組みから、より多くのエンジニアに理解してもらう必要があるようだ。