用語解説

 鋳造によって部品形状を形成するのに適した鉄系材料。鋳鉄の成形型には,砂型が一般に用いられている。工業的に使われる鋳鉄には,普通鋳鉄と球状黒鉛鋳鉄がある。以下で,それぞれについて解説する。

普通鋳鉄:FC

 JISでは,その色から「ねずみ鋳鉄」と表記され,記号は「FC」である。鋳鉄中に分散する炭素粒子(黒鉛)の形が三日月状であることから「片状黒鉛鋳鉄」とも呼ばれている。普通鋳鉄という名称は,特別な合金元素を添加していないことを表している。

 JISでは6種類のグレードを規定している。鋳鉄の組成としてではなく,引っ張り強さや曲げ強さ,たわみ,ブリネル硬さなどの機械的な性質で分けている。

 組織は,ねずみ色のパーライト相の中に三日月状の黒鉛粒子が分散した状態になっている。パーライト相は,フェライト相と鉄炭素化合物(FeC3)が非常に薄い層で交互に並んでいるもの。パーライト相の一部にフェライト相が混じることもある。

 普通鋳鉄を鋳造する場合,成形型に砂型を用いるのには理由がある。熱伝導率の小さな砂を用いることで,砂型と接触する鋳物表面(鋳肌)の部分が急冷されるのを防ぎ,パーライト相が形成されるための十分な冷却時間を確保するのが目的である。鋳物表面の冷却が速すぎると,パーライト相の代わりにフェライト相が形成されることがあるからだ。この場合,鋳物の機械的性質が低下し,鋳物表面が白くなる。これを「チルが入る」と呼ぶ。

 普通鋳鉄製部品の代表例は,自動車のエンジン・ブロックである。砂型の自動成形ラインはかなり大掛かりである。この普通鋳鉄製エンジン・ブロックに,PやCr,B(ホウ素)などの合金元素を添加した特殊鋳鉄製のシリンダーライナーを挿入することもある。

球状黒鉛鋳鉄:FCD

 鋳鉄組織の中に析出している黒鉛の形状が球状であることから,球状黒鉛鋳鉄と呼ばれる。普通鋳鉄の組織では,黒鉛粒子が三日月形状なので,黒鉛部分の先端が尖っている。つまり,鋳鉄の内部には亀裂状の欠陥が散在しているのと同じような状態になっている。こうした尖った部分には応力が集中しやすく,そこをきっかけにクラックが広がりやすい。こうした理由から,普通鋳鉄は大きな塑性変形に弱い。

 これに対して黒鉛が球状の球状黒鉛鋳鉄であれば,応力集中の度合いが小さく,ある程度の塑性変形に対応できる。このため「ダクタイル鋳鉄」とも呼ぶこともある。

 鋳鉄組織中に析出する黒鉛粒子の形状を球状にする方法として,一般に多く使われるのが接種法である。鋳造する直前に,マグネシウム化合物などを添加してから砂型内に注湯すると,冷却過程でマグネシウム化合物が黒鉛粒子の核として働き,等方的に成長する。これにより,鋳造品内に均一に分散した球状黒鉛粒子を析出させることができる。

供給・開発状況
2005/09/01

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