同じ特許が二つ出願された場合,発明日が先である者に特許権を付与する制度のこと。先発明主義は,発明からすぐに出願手続きができない個人発明家が不利を被らない利点がある。その一方で,発明日を明確にするために研究者が詳細なラボノートを付ける必要があり,企業が大きな費用を投じて新技術を製品化した後に,個人発明家から突然「私が先に発明した」と特許訴訟を起こされるリスクがあるなど,問題も多い。
 
 日本や欧州各国は,特許の出願日が早い発明者に特許権を与える「先願主義」を採用している。先発明主義の特許制度を採用しているのは世界中で米国のみである。その独特の特許制度がようやく,廃止されようとしている。2006年9月,日米欧を含む先進41カ国が交わした合意の中に,先発明主義の放棄が明記された。

 米国が先発明主義を放棄に動いたのは,国ごとに異なる特許制度を可能な限りそろえ,国際出願を容易にする「特許調和」の動きに歩調を合わせるためである。