「元・東芝の技術者で,NANDフラッシュ・メモリの開発に携わった東北大学 教授の舛岡富士雄氏。その舛岡氏が東芝に対して同メモリの発明に対する対価を求めていた訴訟が2006年7月27日,和解という形で決着した。舛岡氏が単独または共同発明者となっている東芝在職中のすべての職務発明を対象とし,東芝が同氏に8700万円の和解金を支払うという内容だ。ここで指す職務発明とは外国特許や出願中のもの,特許登録に至らなかったもの,その他のノウハウなどすべてを含む。同氏が主張するフラッシュ・メモリの発明対価は80億円で,その一部として11億100万円を請求していた。

 今回の訴訟は,米University of California,Santa Barbara校(UCSB)教授の中村修二氏が青色発光ダイオード(LED)の発明に対する対価を求めて日亜化学工業を提訴した,いわゆる「中村裁判」に比べると,世間の注目度は低かっただろう。だが,携帯電話機やデジタル・カメラなど多くのエレクトロニクス機器でいまやなくてはならない存在のフラッシュ・メモリをめぐり,発明者と大手電機メーカーが争ったことから,多くの技術者がその行方を注目していたに違いない。

<Interview> 提訴から和解まで
オリジナル技術が企業に利益をもたらす

舛岡 富士雄氏
東北大学 教授