soft error

 狭義には,放射線によってLSIの動作不良が引き起こされること。広義には,トランジスタなどが物理的に壊れるハード・エラーの反対語として,電源電圧や温度が変動したことで生じた動作不良を指すこともある。ただし一般には,狭義の意味で使うことの方が多い。

 狭義でのソフト・エラーは,LSIの設計ルールの微細化に伴って顕著になる。例えば,SRAMでは現在130nm~90nmまで微細化が進んでおり,ソフト・エラーの影響が拡大すると懸念されている。1GバイトのSRAMを搭載するシステムにおいて何ら対策を施さなければ,ソフト・エラーが発生する平均時間は5日~2カ月と短いと,Sun Microsystems社が「6th International Workshop on Radiation Effects on Semiconductor Devices for Space Application」で発表した資料で述べられている。

 SRAMの場合,微細化による電源電圧の低下とトランジスタの寸法の縮小がいずれも保持データが反転しやすくなる方向に働くため,ソフト・エラーの影響が大きくなる。トランジスタの寸法が小さくなると,メモリ・セルが備える容量(キャパシタ)成分が減る。この結果,保持データの反転に必要な電荷量(臨界電荷量)が低減し,わずかな雑音で保持データが反転してしまう。SRAMのほかに,論理回路,DRAMが影響を受けるとされる(図1)。今後は材料やデバイス構造,LSI,基板回路など複数のレイヤでの手法を組み合わせて対策を講じる必要がある(図2)。

 ソフト・エラーを引き起こす放射線は高エネルギー中性子,α粒子,熱中性子の3種類である。現在の主因は高エネルギー中性子で,α粒子や熱中性子の影響は小さくなっている。しかし今後,微細化が進んで臨界電荷量が低減すれば,再びα粒子の影響が顕在化する可能性も残されている。

OFDMの変復調処理の概要
図1 対策を要する設計ルールは異なる

OFDMの変復調処理の概要
図2 各技術レイヤでの対策技術
(図1,図2とも日経エレクトロニクス2005年7月4日号より抜粋)