東芝がCEATECに出展した「TimeOn」のデモ
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 2012年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2012」でも、その姿を目指す展示が少なくなかった。国内家電メーカー各社が展示内容を縮小する中、スマートテレビの新しいサービスを前面に押し出したのは東芝だ。同月下旬から始めるインターネットを用いたテレビ向けサービス「TimeOn」を出展した。録画した番組から視聴したいシーンを検索して再生したり、同社やユーザーが特定シーンにタグ付けしたリストを用いて、そのシーンを頭出し再生したり機能などを提供する。

 Webサービスを介することで、携帯端末とテレビでの情報共有も容易にした。録画や視聴の予約状況を確認するカレンダー機能や、家族や友人とメッセージや伝言を交換したり、写真を共有できる機能などを実現している。「人と人、人とコンテンツをつなぎ、出合いの機会を作るサービスだ」と、東芝 デジタルプロダクツ&サービス社 プロダクト&ソーシャル・インターフェース部 部長の片岡秀夫氏は説明する(関連記事7関連記事8)。

KDDIの「SmartTV Box」のユーザー・インタフェース。ゲームなどのアプリ配信に対応する。
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 テレビに外付けするセットトップ・ボックス(STB)を、より高機能にすることでスマートテレビを実現する方向性も大きな流れの一つだ。例えば、KDDIは今回のCEATECで、米Google社のソフトウエア基盤「Android 4.0」を搭載したCATV向けのセットトップ・ボックス(STB)「SmartTV Box」の出展に大きなスペースを割いた。2012年7月に発表し、パナソニックと共同で開発したSTBである。

 Android端末向けのアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)の配信サービスに対応する。サービス開始時には、約100本のテレビ向けアプリを用意する計画だ。無線LANアクセスポイント機能を備え、携帯端末との連携も実現した。家庭内ネットワークで放送中の番組や録画番組を携帯端末で視聴したりすることが可能である。

テレビ自体をスマート化するよりも、外付けの機器で

NTTぷららが投入するAndroid搭載STBの試作デモ。
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 KDDIはスマートフォン向け映像配信サービスなどで提供するコンテンツをテレビで利用できるスティック型の簡易版の機器もCEATECで参考出展した。USBメモリ程度の大きさでHDMI端子に接続して用いる。同様のスティック型の端末を用いたサービスは、ソフトバンクモバイルも2012年12月以降に提供を開始することを明らかにしている。

 Android搭載STBは、NTTぷららもIPTVサービス向けに開発中だ。2012年度内に投入する。米Microsoft社のように据置型の家庭用ゲーム機をCATV用のSTBとして利用できるようにする動きもある(関連記事9)。こうした取り組みが注目を集める背景にあるのは、日本や米国などの先進国では既にこの数年で大画面テレビが広く普及したことがある。携帯端末の進化は速い。テレビの進化をそれに合わせるには、テレビの買い替え期間を考えると、テレビ受像機自体をスマート化するよりも、外付けの機器を活用してサービスを提供した方が現実的というわけだ。

米CATV最大手のComcast社は、自社のブース内で携帯電話事業大手のVerizon Wireless社の動画配信サービスを大々的にアピールし、モバイル業界との密接な関係をアピールした。Cable Show 2012で。
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 CATVや衛星放送が広く普及した米国では、特にこの見方が根強い。ソーシャル視聴やマルチスクリーンのサービスを拡充するため、米国のCATV事業者の間では携帯電話事業者と密接に連携したり、公衆無線LANのサービスに本腰を入れる取り組みが広がっている(関連記事10関連記事11)。

 インターネットを用いて携帯端末やテレビ向けに映像配信するサービスの切り札として、関心を呼んでいる次世代の動画圧縮技術の開発も本格化している。動画圧縮の国際標準化団体「Moving Picture Experts Group(MPEG)」と「Video Coding Experts Group(VCEG)」の共同チームが標準化を進める「High Efficiency Video Coding(HEVC)」が、それだ。現行規格の「H.264/MPEG-4 AVC」で実現している圧縮率を2倍に高めることを目標にしている。4K×2K画素の超高精細動画や、携帯端末向け動画配信サービスへの応用で期待が大きい。