2種類の材料を混ぜ合わせて造形した肝臓の生体モデル
2種類の材料を混ぜ合わせて造形した肝臓の生体モデル
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パナソニックが参考出展した3Dモニター
パナソニックが参考出展した3Dモニター
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 2011年7月のデジタルヘルス分野では、相次いで開催された展示会の話題に注目が集まった。「MEDTEC JAPAN 2011」や「国際モダンホスピタルショウ2011」、「国際バイオEXPO」といった関連展示会に関する記事が、記事ランキング(2011年7月分、トップ10を本記事の最下部に掲載)の多くを占めた。

 中でも、最も注目を集めたのが、3次元プリンターで造形した生体モデルを実際の手術の現場に持ち込み、複数の手術を成功させたという神戸大学医学部附属病院に関する記事である。2種類の材料を混ぜ合わせて造形できるイスラエルObjet Geometries社の3次元プリンターの新製品「Objet260 Connex」を用いた。これにより、一方の材料を透明な素材にすれば、人体内部の骨や腫瘍などの位置を外部から確認できる生体モデルを造形できる。

 このような生体モデルを利用することで、「手術の精度が格段に高まる」(神戸大学大学院医学研究科 神戸大学医学部附属病院 特命講師の杉本真樹氏)という。例えば、実際の臓器を処置する前に、処置方法のシミュレーションが可能になる他、「手術中に生体モデルと照らし合わせながらスタッフと議論し、最適な方法を選択できる」(同氏)。さらに、若手の医師に向けた教育にも役立つと見る。

 この生体モデルが展示されたMEDTEC JAPAN 2011関連の記事としては、「エレクトロニクスからメディカルへ」と題して講演した村田製作所に関する記事が4位、開発中の非接触型MEMS温度センサーを展示したオムロンに関する記事が8位に入った。

 村田製作所は同講演内で、今後の医療分野に向けた具体的な取り組みとして大きく二つの方向性を挙げた。一つは、セラミック・コンデンサやノイズ対策部品といった汎用的な電子部品を、医療機器に向けにも積極的に展開していくこと。もう一つは、医療分野に特化した「新たな付加価値を生み出す機能部品」(同社)を開発していくことである。

「病院まるごと」を打ち出したパナソニック・グループ

 一方、国際モダンホスピタルショウ2011に関する記事で最も注目を集めたのは、「携帯電話脳波測定アプリ」を展示したKDDI研究所に関する記事である。ランキングの2位に入った。続いて、「TOUGHBOOK」ブランドのタブレット端末を参考出展したパナソニックに関する記事が3位に入った。

 パナソニックは同展示会で、2011年末の発売を予定する内視鏡手術に向けた3次元表示(3D)液晶モニターも参考出展した。32型でフルHD(1920×1080画素)の液晶パネルに、有沢製作所の偏光フィルタ「Xpol」を張り合わせたものである。円偏光方式のメガネを利用することで、3D映像を見ることができる。記事ランキングでは5位に入り、「参考になった」票も多く集めた。

 内視鏡手術において3D映像を利用することで、「縫合時の位置関係などが把握しやすくなるため、手術のスピードが速くなり、患者の負担も軽減できる」(パナソニック)という。医療現場からの期待は大きく、今後、3Dの普及が見込まれるとする。

 パナソニックは今回、初めて三洋電機(およびパナソニック ヘルスケア)と合同で出展し、同展示会で最大規模のブースを構えた。これまで両社が手掛けてきた事業を融合することで、「病院まるごと」といったトータル・ソリューションを提案していく姿勢を打ち出した。

 国際モダンホスピタルショウ2011関連ではこの他、「スマートホスピタル」という次世代の病院像を示した東芝に関する記事が7位に入った。

 以下は、Tech-On!のクローズアップサイト「デジタルヘルス」における2011年7月の記事ランキングである。

【2011年7月のデジタルヘルス記事ランキング】
◇1位:【MEDTEC】最新3次元プリンターによる生体モデルを用いた「世界初」の手術に成功、神戸大学が成果を公開
◇2位:【ホスピタルショウ】KDDI研が「携帯電話脳波測定アプリ」を展示、2011年内の実用化を目指す
◇3位:【ホスピタルショウ】「TOUGHBOOK」ブランドのAndroidタブレット、パナソニックが参考出展
◇4位:【MEDTEC】「エレクトロニクスからメディカルへ」、村田製作所や日本TIの講演が大盛況
◇5位:【ホスピタルショウ】パナソニック、内視鏡手術向け3D液晶モニターを参考出展、2011年内に発売へ
◇6位:
「つくばが変わる、日本を変える」、つくば市と筑波大学、インテルが2015年に向けたプロジェクト
◇7位:【ホスピタルショウ】「東芝が考えるスマートホスピタル」、同社の総合力で実現可能な新たな病院像を提示
◇8位:【MEDTEC】オムロン,開発中の非接触型MEMS温度センサーを展示
◇9位:“蓄電医療機器”が開発要件に、計画停電で浮き彫りになった医療機関の電力事情
◇10位:【バイオEXPO】「透明バイオセンサ」をDNPが展示、電気的特性の評価と顕微鏡観察を両立

■2011年6月のデジタルヘルス記事ランキングはこちら
■2011年5月のデジタルヘルス記事ランキングはこちら

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