医療機器センター 医療機器産業研究所は、東日本大震災に伴う東京電力管内の計画停電が医療機関にどのような影響を与えたのかなどについて調査した結果を公表した。同研究所は調査結果を踏まえ、蓄電池を搭載した医療機器、いわゆる“蓄電医療機器”が、今後期待される医療機器の開発要件の一つになるとした。

 調査はアンケート形式で、計画停電の対象地域になったと考えられる1948の医療機関を対象に、2011年4月25日~5月16日に実施した。回収率18.2%となる355の医療機関から回答を得た。

通常通りの診療を実施できたのは28.4%

 多くの医療施設は自家発電設備を保有している。しかし、調査結果からは、あくまで緊急時のバックアップ用として利用する程度の能力しか備えていない施設が多いことが分かったという。具体的には、自家発電設備を保有する施設は全体の90.5%と多かった。ただし、自家発電設備を保有する施設のうち、自家発電設備で施設全体の電力をまかなえるとしたのは26.5%にとどまった。

自家発電設備の保有状況(左) と、自家発電設備の能力(右) (図は医療機器産業研究所のリリースから)
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 これを裏付けるように、計画停電中に通常通りの診療が実施できたとした施設は28.4%と少なかった。一方、一部のみ診療可能だったとした施設は55.4%、診療を中断したとする施設も16.2%存在した。

計画停電中の診療状態 (図は医療機器産業研究所のリリースから)
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 このうち、一部のみ診療可能だったとした施設における診療のレベル(水準)を尋ねたところ、通常時に対して平均で5~6割のレベルという結果だった。これを受けて医療機器産業研究所は、「どこの医療機関に行っても通常の診療を受けることが望まれるが、計画停電中にはそれが必ずしも可能ではない実態が明らかとなった」とした。

 また、限られた電力の中で、どの医療機器/医療設備の使用を優先したのかについても尋ねた。その結果、患者監視装置(心電計、ベッドサイドモニターなど)や輸液ポンプ、人工呼吸器など、治療機器関連の使用が優先されたことが分かった。これは、予想通りの結果と言えそうだ。

計画停電中であっても使用を優先した医療機器や医療設備など(上位5位まで) (図は医療機器産業研究所のリリースから)
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医療機器の省エネ化も今後の開発要件に

 調査結果を踏まえて医療機器産業研究所は、今後の対策を検討する上で重要と考えられる点を幾つか提示した。

 その一つは、今後期待される医療機器の要件である。具体的には、調査結果から浮かび上がった要件として「医療機器の省エネ化」「医療機器の起動時・終了時の時間短縮化」「医療機器の蓄電池搭載」などを挙げた。「これまでの医療機器開発のあり方とは全く別物として、これらの要件が今後期待される」(同研究所)とした。

 例えば、医療機器メーカーであるコニカミノルタエムジー 代表取締役社長の児玉篤氏は、本誌のインタビューにおいて、「被災地に援助した電池駆動のパルス・オキシメーター(血中酸素飽和度を測定する機器)が、ものすごく評判だった」という話に触れ、今後の機器開発において新たな方向性があり得るという見解を示している(関連記事)

 この他、医療機器産業研究所は、自家発電設備の増設も重要であるとした。「保有状況は90.5%と高く、一定の評価ができるものの、(調査結果から浮き彫りになった)利用できる時間の限界や診療に与える影響の大きさを考えると、さらなる自家発電設備の増設が必要と考えられる」(同研究所)とする。

 例えば、2011年7月13~15日に東京ビッグサイトで開催された「国際モダンホスピタルショウ2011」では、東芝が、同社のエネルギー技術を結集した“病院版スマートグリッド”の実現によって、災害などで業務が止まらない病院を構築できると発表した(関連記事)。コジェネレーション発電装置や太陽光発電装置、大型蓄電装置などを組み合わせることで、災害時などでも状況に応じた電力供給を可能にするというシステムである。このような動きも今後は活発になりそうだ。